エンゲージメント・マーケティング

engagement2「人間はみずからつくるところのもの以外の何ものでもない。」(サルトル)エンゲージメント (engagement)という英語は、約束や契約のほかに、用事、仕事、債務など様々な意味を持つが、いずれも能動的(自発的、継続的、意識的)関与という契機がコアになっている。その昔、哲学者のサルトルが日本の自称インテリの間に流行させた「アンガージュマン」も同じだと言えば、一驚される方もいるだろう。これがマーケティングに使われるとはね。

マーケティングにおいては、顧客をブランド構築に引き込む戦略に使われてきた。ブランドというものは消費者が関与しないと成り立たない社会的なイメージ資産(たとえばAKB48)で、本質的には目新しいものではないが、これが2000年代中頃に使われ始めた背景には、やはりインターネットの普及という情報環境の変化がある。商業的価値を生む企業の占有物であるブランドの構築に、消費者を自発的に参加するように仕向けるという、かなり大胆な(図々しい)ことなので、濫用すれば逆効果にもなる、マーケティングとしてはリスクの高い戦略だ。

エンゲージメント・マーケティングが戦略方法論として成立するためには、エンゲージメント(ブランド体験)を測定する手法、維持・向上させる方法、キャンペーン手法、スタッフの教育などが体系化される必要があった。インターネット上では、企業のサイトやSNS、DMを通じてユーザーの様々な振舞いが記録され、追跡できるので、マクロとミクロでエンゲージメントを管理することが可能となる。米国の広告業界において、従来の認知度や好感度といった間接的指標に替る有効性を認められたのは2006年頃だった(下の図はWikipediaの解説より)。

Engagementエンゲージメント・マーケティングはたんなるコンセプトではない。すでに巨大なビジネスを動かしている。むしろあまり大きすぎて見えないのだろう。日本ではアマゾンやアップルの成功をエンゲージメント戦略と結びつけて理解する人は少ないが、この2社は紛れもなく、消費者のエンゲージメントによって成功してきた。欧米の大手出版社はWebによるブランド戦略手法を導入し、実験を繰り返して改善している。そろそろ日本でも取り組まれてきてよい頃だ。しかし、重要なことは、ブランドを公共的資産へと高める「大義名分」へのコミットメントだ。これはビジネスとしての「実存」の問題なのである。  (鎌田、07/25/2013)

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参考

下の図は、Webマーケティングにおけるエンゲージメントのタイプ分類の一例

wiredset_engagement

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