ジャンルで異なるデジタル比率を考える

content3デジタル出版を日本より3年ほど早く掴んだ米国出版界では、E-Bookが全体の25%を占めた現時点で、最適配分問題が詳細に検討されるようになってきた。高精度、多次元、高速の統計インフラがほぼ完成したことで、これまでには考えられなかったような分析が可能になったためである。Publishers Weeklyの8月9日付記事が今年前半のベストセラーを対象に興味深い分析を提供しているのでご紹介する。

「早くて安い」入手手段がフィクションで生きる

米国ではNielsen BookScan や BookStatsとした、リアルタイムに近い市場データ基盤が整備された結果、書籍の市場性評価およびマーケティング方法論、手法の研究開発が活発化している。これまで、紙を脅かすものとして警戒的視点でばかり見られてきたE-Bookが、本の隠れた可能性をフルに発揮するものと見られるようになってきたためだ。容疑者がヒーローになったようなもの。

cheap_fast_goodデジタル比率は、フィクション(とくにジャンル系)に多いことは、昨年1年間で知られるようになってきた。非実用的な本ほど、SNSなどを通じたソーシャルな情報に感応して売れやすく、消費者は予備知識がない本と著者については「安く・早い」フォーマットを必要とするということだ。話題には揮発性がありイベント的なので、「安く・早い」手段がなければ、売れる可能性は極端に落ちる。紙の場合は売れ残って大きな損失となる。昨年の超ベストセラー(『フィフティ・シェイズ』)の場合は、E-Bookが紙の売上を高め、人前で読める本にもなった。共喰いどころか、自主出版のデジタルから大手の印刷本までのブームが生まれ、それがデジタルにも反響して、恐ろしいほどの数字となった。デジタルは、提供形態によってどれだけ市場が活性化できるかを示した。25%は紙を犠牲にせず得られたものだ。

クレア・スワンソン氏は、今年6月30日までのトップ20を対象に、出版社から情報を得てE-Book比率をみているが、フィクションでは50/50といったところ。映画化されて話題になった『グレート・ギャツビー』は電子化されて48%にもなった。'The Best of Me' (by Nicholas Sparks)と 'Innocent' (by David Baldacci)も同じ。他方で Jeff Kinneyが子供向けに書き、絵も多い 'Diary of a Wimpy Kid' は、デジ比率20%と圧倒的に紙が優位。これも子供向け、『ドクター・シーアス』シリーズの2点、'Oh, The Places You’ll Go' と 'Green Eggs and Ham' の場合はE-Bookがなく、デジタルはアプリのみなので0%となっている。

他方ノンフィクションの場合は、デジ比率は25%といったところ。Eben Alexander の 'Proof of Heaven' と Ian K. Smith の 'Shred: The Revolutionary Diet' は25%。 Phil Robertson の ’Happy, Happy, Happy' が18%,  Willie & Korie Robertson の'The Duck Commander Family' は21%。ノンフィクションの場合のデジ比率の低さについては説明がないが、常識的に考えれば、ノンフィクションの場合、記録=保存性、実用性などの理由で紙フォーマットの価値が積極的に評価されているものと言えるだろう。フィクションの場合は多くを読む関係上、必ずしも保存を望まないのに対して、書棚に置いておきたいと考える人が多い。E-Bookの寿命がいまだ人々の信頼を得ていないので、ノンフィクションは紙というイメージがあるのかも知れない。 (鎌田、08/15/2013)

 

Gauging the Print, E-book Divide: Fiction bestsellers close to an even e-p split. By Clare Swanson, Publishers Weekly, 08/09/2013

2013上半期の印刷書籍ベストセラー E-Book構成比
1. Inferno by Dan Brown (Doubleday) 不明
2. Proof of Heaven by Eben Alexander (Simon & Schuster) 25%
3. The Third Wheel by Jeff Kinney (Abrams/Amulet) 20%
4. Lean In by Sheryl Sandberg (Knopf) 不明
5. Jesus Calling by Sarah Young (Thomas Nelson) 不明*
6. The Great Gatsby by F. Scott Fitzgerald (Scribner) 48%
7. Oh, The Places You’ll Go! by Dr. Seuss (Random House) 0%**
8. Fifty Shades of Grey by E.L. James (Vintage) 不明
9. And the Mountains Echoed by Khaled Hosseini (Riverhead) 不明
10. Happy, Happy, Happy by Phil Robertson (Howard Books) 18%
11. A Memory of Light by Robert Jordan (Tor) 不明
12. Green Eggs and Ham by Dr. Seuss (Random House) 0%**
13. Gone Girl by Gillian Flynn (Crown) 不明
14. American Sniper by Chris Kyle (Harper) 22%
15. Strengths Finder 2.0 by Tom Rath (Gallup Press) 5%
16. World War Z by Max Brooks (Three Rivers) 不明
17. The Best of Me by Nicholas Sparks (Grand Central) 50%
18. Shred: The Revolutionary Diet by Ian K. Smith (St. Martin’s) 25%
19. The Innocent by David Baldacci (Vision) 50%
20. The Duck Commander Family by Willie & Korie Robertson (Howard Books) 21%

* 正確な数字は得られないが、大部分は紙であるもの  ** E-Book版がないもの

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