アップル裁判の真の争点はIAPルール *情報追加

senator_john_sherman「アップル裁判」は反トラスト法上の「矯正命令」をめぐる駆け引きがギリギリの攻防を見せている。司法省は地裁判事の指示に基づき、先週末に合意書の改訂案を発表した。前回提案よりは緩和しながらも、なおApp Storeのコンテンツ販売方法全体の大幅変更を求める姿勢を明確にしている。アップル弁護団はDoJがアマゾンの味方をしていると非難。ここでアマゾンという「第三者」の存在がクローズアップされてきた。

米国政府はIAPルールの競争制限条項の撤廃を要求

DoJ_antitrustDoJは、かねて問題となってきた、アマゾンなどの競合他社に対するアプリ内決済(IAP)利用規制の解除を要求している。つまりすでに決着した「エージェンシー価格制」などより、2011年夏に変更されたIAPルールこそを問題としている。ご記憶にある方もいるだろうが、iOSから iTunes Store を経ずに自社サイトに誘導していたアマゾンやB&N、Koboのアプリを無効にしたものだ。これはE-Bookだけではなく、雑誌や新聞、動画などすべてのコンテンツに対して適用されたものだ。DoJは、それが「アップルのデバイスを使う消費者が、様々な小売業者の価格を比較し、アップル以外のストアから購入することを困難にする」ものだったと断罪している。簡単に言えば、IAPルールがあってこそ「エージェンシー価格制」を徹底できたわけで、これが諸悪の根源だということだ。

DoJの8月2日付書面には「アップルは、App Storeが何を行い、何を行っているのかを中心とした本件の事実関係について虚偽を申し述べている。アップルが30%の手数料を、このアプリを通じて販売されるすべての物品について、すべての小売業者から徴収していたというのは、事実ではない。それはコンテンツだけを対象としていたからだ。DoJはそこでジョブズとアップルの担当者の間で交わされたメールを、とっておきの証拠として引用している。Androidフォンと iPhone の間で自由に受け渡せる Kindleアプリの読書環境の優位を訴求したアマゾンのテレビCMについてジョブズに「不快」と報告したスタッフに対し、「もしAndroidとうちのを比較したいのなら、彼らには、はるかに優れたうちの決済システムを嫌でも使ってもらおうじゃないか。」と述べたものだ。

「政府はアマゾンの肩を持っている」

「アップル裁判」は、当初の「アップルと出版5社による価格談合」事件の審理から、「アップルのビジネスモデルの非競争性とその解体」へと性格を一変させた。出版5社が裁判の開始前に全面降伏し、一審でアップルが「有罪」となったためであるが、そのことは予想されていなかった。しかし、DoJの当初のシナリオに描かれていなかったはずはなく、NY南地裁のコート判事がこの構図に加担していることも、おそらく確実だろう。つまりこの裁判は、IBMやAT&T、あるいはその昔のスタンダード・オイルや映画産業を舞台とした、米国の競争政策における歴史的な事件として準備されてきたものだということだ。スティーブ・ジョブズとのメールによるやり取りを暴露された大手出版社の首脳たちは、ほとんど道化役者のような役回りを演じさせられていたわけだ。

Bezos_Chessアップルの弁護団は、どうもターゲットが自分たちだという認識を十分に持っていなかったのかも知れない。「DoJはアマゾンの肩を持っている」と主張して、アップルへの制裁がアマゾンを有利にすることへの懸念を喚起しようとしているが、これは「イノベーションを阻害」という主張と同様に説得力が弱い。アップルはありあまる人材と資金を投入して、どんな土俵でもアマゾンと尋常な勝負をできる立場にあるからだ。

DoJは、アップルのIAPルールが「音楽(音声)、映画、TV番組、あるいはアプリ」全般に及んでいる以上、これらをも対象とすることは、将来の独禁法違反を阻止するために必要かつ賢明である」と述べている。本誌は2011年2月23日号の記事でIAPルールの改訂に米欧の独禁当局が注目しているという記事を掲載した。事態の展開は予想よりかなり早い。(鎌田、08/27/2013)

追加記事

日本時間で8月28日に事態に進展があり、NY南地裁のコート判事がアップルへの是正命令に関して司法省案を大幅に緩和することで「和解」への道を開いた。重要な点はおそらく以下であろう。

  1. App Storeへの規制については含めない(アップルはこれをiBookstoreに対する制裁への迂回に使わない)
  2. 外部監査は、経営に対してではなく、反トラスト法遵守方針および講習に限定し、期間は2年間とする。
  3. DoJ提案(競合する小売業者に対してIAPの無償利用を2年間にわたって認める)は削除

コート判事はこれにより、是正命令がE-Bookに限定され、過酷な懲罰にはならない、と述べている。アップルのビジネスへの影響に配慮した結果だ。最終文書は来週水曜に完成し、問題がなければ署名、発効となる。

参考記事

 

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