「定価販売」の終焉がNookを潰した!?

bitten-apple米国市場でアマゾンに次ぐ座にあったB&Nの急速な没落の直接的原因については、デバイスの失敗という以外に説明らしいものがなく、気になっていた。Digital Book Worldのグリーンフィールド編集長は、8月22日の記事で「エージェンシー価格の終焉こそ Nookの死の主因ではないか」という仮説を提起している。昨年秋に始まった「定価」の崩壊と Nookのシェア低下、赤字の急増は、時期的に正確に一致する。果たして…。

出版大手6社による無競争(利益保証)状態がNookを支援

蛇足ながら、エージェンシー価格制(小売価格を出版社が指定する委託販売制)は、日本の「再販売価格維持」と近いが、米国では印刷本も基本的に卸販売制が主流なので、E-Bookで2010年春のiPad発売以来、大手出版社(最初5社、のち6社)において採用されていたシステムである。この導入経緯に談合があったとして、昨年司法省が独禁法違反で摘発。夏までに出版社が順次和解に応じ、すでに「是正」措置がとられた。1年半から2年の存続期間だったが、このかん6社の本については価格競争が存在しなかった。アマゾンもB&Nも、もちろんアップルも同じ価格で販売し、同じ手数料を得ていた。消費者には選択の自由がなかった。

freerider_hori小売価格が$12.99なら、3.9ドルあまりがオンライン書店のマージンとなる。アマゾンの低価格戦略を封じたわけだが、アマゾンも利益を保証されたわけであり、損をしたわけではない。もし$12.99で仕入れた書籍を(大手出版社が問題にした) $9.99で販売していたら、2ドルづつ損をしていた。シェアが大きいアマゾンほど損失は大きかったはずだが、ジョブズが尽力してくれたお蔭で、2ドルの損失どころか4ドルの利益を得ていた。最大の受益者と言える。しかし、重要なことは、アマゾンの次の受益者が、アップル以上に既存の顧客ベースを有するB&Nであったことだ。シェアという観点から言えば、Kindleは2009年までの圧倒的シェアを減らして、Nook とiBookstoreが計3割あまりを得た。ベストセラー本の最大のシェアを占める大手の書籍に関して競争が存在しなかったために、Nookは市場拡大による果実を労せずして得た格好だ。

エージェンシー制下での束の間の繁栄は終わった。昨年後半から市場環境は一変し、それに耐えきれなかったB&NのNook事業が破綻した可能性が高い、とするグリーンフィールド氏の仮説は、B&Nの四半期決算と対照させる限り、強い説得力がある。Nook事業は直近の決算で年5億ドルあまりの赤字を計上したが、前年度の3億ドル規模と比較して急増している。本来ならばコンテンツの売上+利益の増加によって縮小に向かう計算をしていたはずである。無(価格)競争の終焉は、思いのほかに強いインパクトをNookに与えた。失敗の真の原因は、過剰在庫を積み上げたデバイス事業ではなく、むしろデバイス販売を失速させたコンテンツ戦略にあった。本誌はそう考えている。価格問題については別に検討してみたい。  (鎌田、08/26/2013)

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