アマゾンが統合雑誌購読プラットフォーム (♥)

missing linkアマゾンは、デジタルと紙を一括した雑誌定期購読手続のパイロット・プログラム“All Access”を準備している。最初の参加企業はコンデ・ナスト社で、Vogue、Glamour、Bon Appétit、Lucky、Golf Digest、Vanity FairおよびWIREDの7誌で先行スタートし、残りは年内にカバーする予定。また7誌については、期間限定で半年分が各6ドル以下で購読出来るキャンペーンを実施している。[♥=期間限定公開、9/30までどなたもお読みいただけます。]

購読管理の統合は雑誌ビジネスのミッシング・リンク

キャンペーンでは、下の図のように6ヵ月の特別価格で、紙とデジタルの購読ができ、デジタル版はそのままアクセス可能、紙は配送注文が完了となる。簡単で価格も魅力的だ。周知のように、米国の雑誌ビジネスでは定期購読者の獲得のために莫大なコストがかけられる。購読者とのインタフェースの統合は、大きな壁を超えたことを意味する。少なくとも対象となった雑誌に関する限り、「紙かデジタルか」ではなく、「紙もデジタルも」でない限り、広告をベースとする雑誌のビジネスモデルは成り立たないからだ。

allaccessこれまで、紙とデジタルの購読手続は一括して行うことが出来なかった。これらのフォーマットを使い分けたい、アクティブな読者には不便であり、また、雑誌出版社も購読者管理が分散することになることから、電子雑誌が容易に立ち上がらない理由の一つになっていたと思われる。“All Access” は、アマゾンのアカウントで、ワンクリック・プラットフォームを使った購読・管理・更新を行うことが出来る。

広告をビジネスモデルの不可分の一部として成立している商業雑誌にとっては、購読収入に頼ることは読者を減らすためにもともと困難だ。高品質な印刷物というフォーマットでは、ブランド価値は維持できるが、デジタル・ファーストの雑誌より高コストで、広告媒体としては読者のレスポンスが遅いのでWebに負ける。結局、紙、電子雑誌、Webという3形態を効率よく管理し、効果的に運用するしかない。米国の雑誌ビジネスがiPad以後の3年あまりで到達した結論はそれであったが、いまだに片付いたとは言えないのが、購読者管理の問題だ。理論的に言えば、雑誌社がすべてのフォーマット(メディア)について統一的な読者管理が可能な環境が、コンテンツの価値を最大化するものであるはずだが、3フォーマットの中でE-Magazineは雑誌社の外にあるストアに依存せざるを得ない。雑誌コンテンツの広告価値は、ストアにとっても大きいので、iPadがタブレットで圧倒的シェアを持っている間は、強気のアップルは雑誌ビジネスにとって意味のある提案をしなかった。

雑誌社としては当初、iPadに期待していたのだが、アップルは30%の手数料と購読者情報管理における主導権を手放さなかったために、単品売りが続き、オンライン定期購読の導入はかなり遅れた。新規読者の獲得と現読者の更新、旧読者の復活を統合的に行う体制にはほど遠い。印刷版も扱い、最も強力な決済プラットフォームを持つアマゾンは、やはり動いた。手数料や情報共有など“All Access”の詳細な条件は明らかではないが、思い切ったキャンペーン価格からみて、コンデナストにとって悪くないものであった可能性が高い。どうやら市場が動き始めたようだ。  (鎌田、09/04/2013)

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