堅実にデジタル転換を進めるドイツ出版界

tolino-shine_1260-280x150アマゾンは9月から、ドイツでのKindleベーシック版の価格を49ユーロ(≒6,500円)に引き下げた。他の欧州諸国ではまだ€79で販売されているが、ドイツでは3ヵ月前に€69で販売されていた。一段の値下げは、ドイツにおけるE-Book市場が活性化し、競争が激化したことを反映していると考えられている。最近の状況を確認してみよう。

出版大国ドイツの書籍流通は、高度な効率性で知られており、専門性の高い書店、巨大なデータベースと受発注システムを持つ大手取次(リブリ)の存在によって、低い返品率(約6%)、注文に対する迅速な配送が高く評価されてきた。なお委託制の日本と異なり、買い取り制で、新刊に限定した時限再販がとられている。それでも、印刷書籍の25%はオンラインで流通し、その比率も、分野や地域などでバラつきがある。アマゾンはオンライン顧客をベースにKindleの展開を始めた。競合はKoboや書店連合によるTolino(写真=上)だが、小売価格の差がないにもかかわらず、3分の2を占めていると推定されている。

Kindle_germany2012年のドイツのデジタル化率ははまだ2.4%(前年は1.6%)に過ぎないが、ジャンルによっては10%から20%にも達している。そしてE-Bookを発行している出版社も53%(前年は35%)とまだ半数あまりだが、すでに発行している出版社に限れば、売上比率は10%と伝えられている。新刊書のデジタル化率は54%で、既刊本では29%。これらも日本よりは高いだろう。つまり、フィクションなどの分野では、すでに英語圏へのキャッチアップを開始したことは間違いない。表面的にはまだ2%台であっても、市場は大きく動いている。

デジタル市場の拡大と印刷本市場への影響が確認されなかったことで、出版社もE-Book価格の低下げに積極的に取り組んでいる。2011年には印刷本価格の87%が平均であったが、昨年は69%に下がった。これはE-Bookに関して売上を最大化する価格設定が広がってきたためと考えられる。出版市場が米国に近く、タイトルも共通する英国に比べて時間はかかっているが、ヒステリックなまでにデジタルを嫌悪・警戒するフランスや、鈍重な日本と比べて、着実・堅実にデジタル・パラダイムに移行しつつあるのは、やはり“ドイツ的”と言える。(鎌田、09/18/2013)

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