“アマゾン消費税”は機能するか(♥)

internet_taxEUは、委員会通達 (Council Directive) において、E-Bookを含む電子的サービスに関わる域内諸国の付加価値税(VAT)の徴収方法を変更することを発表した。簡単に言って、これまで提供国(サーバ所在地)で課税されていたものを、2015年1月から消費国課税に切替えようというものだ。日本の出版9団体の「要望」と同じだが、果たしてこれは実現可能か。[全文=会員]

taxfreeひと頃ほどではないが、消費税や酒税などの税金(Tax)や輸入品にかかる関税(Duty)を免除する「免税品/免税店」は大きな魅力であり、海外旅行の目的の一つでさえある。税金が好きな人はいない(使うのが仕事の人は除く)。EU諸国のVATはとくに高率なので、免税手続きをして払い戻しを受けられた人も多いだろう。VATが免税になるのは、国外に出るまで使用しない旅行者であるためだ。日本から物品を購入し、発送してもらえば、オンラインサイトでも、免税が適用されるから、利用者はじりじり増えている。気にする必要があるのは日本での関税だけで、消費税の心配はいらない。

しかし、EUの新解釈によれば、オンラインコンテンツには、消費国の税率が適用されるのだという。そして販売者は購入者の居住国とVAT税率を調べ、課税分を別に徴収し、納税(送金)することになる。

「E-Bookは本に非ず」というEU当局!?

EU_flagEU加盟国は現在28ヵ国で、多くの国では15-20%という高率のVATが、コンテンツに対しても課税される。ルクセンブルクは3%、フランスは7%なので、開きは大きい。アマゾンやKoboがルクセンブルクを欧州拠点にしているのは言うまでもない。さて2006年にEUは書籍に関してはVATを低くしてもよいとしていたのだが、昨年7月には、E-Bookを「書籍」に非ずと認定、さらに「低すぎる」税率を「違法」とすることを決定した。理由は明らかにされていないが、「統一大市場」によって事業を容易にするというEUの原則に反することは確かだろう。今回の決定は、EUの決定を無視し続けるルクセンブルクとアマゾン(+アップルなど米国系企業)をターゲットにしたものということになろう。

tax_doc国境を越えた課税は簡単ではない。消費税は消費(者)に対して課されるものであるからだ。税制は、基本的に国境を越えて自由に移動する情報やサービスを考慮していない。しかしEUという関税同盟の中では、まだ国境があり異なる徴税システムが機能している。米国も州によってVATは異なるが、コマースは無税にしていてわかりやすかった。最近では州法を変え、アマゾン課税が進んでいるが、コンテンツは無税。

第1に、税金は国内で完結するシステムであり、外国にあるサービス提供企業に対し、消費者が所属する政府への「納税」義務を課すことは困難だ。このシステムは単純ではなく、個々の取引案件ごとに、28の消費国の特定、価格表示、徴税・納税手続きなどが対応することになる。つまり限りなく輸入関税に近くなる。EUは域内関税の撤廃のために生まれたというのは嘘だったのかということになろう。

第2に、「脱税」取締は現行法では不可能と思われる。たとえば英国政府が、ルクセンブルグを本拠とするアマゾンやアップルからE-Bookやアプリを購入した自国民(納税義務者)に、英国の税率の消費税を確実に支払わせる方法は、存在していない。そのためのシステム構築・運営のコストは安いものではない。28の税務当局が自国民に対する販売の詳細を把握する必要が出てくるだろう。

第3に、税金というシステムは、経済活動に大きな影響を与える。消費税は消費行為に課されるもので、単純に言って、その分の消費を減少させる。E-Bookなどの場合にはイノベーションとコンテンツ市場形成の阻害要因となるだろう。米国で課税しないのはそのためだ。(次ページに続く)

Pages: 1 2

Scroll Up