デジタル30%と米国出版社の戦略転換

AAP9月19日に米国出版社協会(AAP)から発表された2013年前半の出荷統計によると、成年向けE-Bookの市場規模は6億7,770万ドルで、前年の同期間を5%上回った。最初の4ヵ月が12%増だったので、さらに減速したことになる。強力なベストセラーを欠いた児童・青少年向け分野は45.6%減の8,370万ドルと大幅なマイナスとなった(前年は1億5,370万ドル)。

出版社は売上げより収益を重視

golden_egg児童・青少年向けについて補足すれば、2011年の同期が4,000万ドルあまりなので、2012年同期の数字が、特定のベストセラーに偏った瞬間的なものであったことになる。商業出版物全体の売上は6.2%減って31億ドル。またE-Bookのシェアは27.8%で、1-4月に記録した28.7%からは1ポイントあまり減った。出版社のデジタル熱もこれで冷めるだろうか? それはない。以前にも述べたが、そもそも商業出版社全体の8割あまりをカバーしていると言われるAAPの数字だけでは市場全体の動向が見えなくなっている。アマゾンやKoboのプラットフォームでも、自主出版は売上の10%を占めており、瞬間的ベストセラーに左右されない実際の市場はさらに大きい。

もうひとつの理由は、出版社があまり言わないことだが、デジタルは儲かるということだ。例えば、英国アシェット社では、デジタルとの二本立てによって、「最適配分」を志向するようになったが、初版の最小印刷部数を、15,000部から1,500部に引き下げることが可能となっている。ベストセラー狙いのもの以外は、低い数字からスタートし、販売パターンを見て増刷するという方法に切り替えた結果、個々のタイトルごとの収支は大幅に改善した。大手出版社は売上げ重視から利益率重視に転換している。収益性の向上は、マーケティングを中心にデジタル・インフラへのより積極的な投資を可能にする。自主出版という重要なトレンドを、自社の成長に導くためだ。それにより、街の書店の棚に並ぶ本の数は減り、ますますオンライン書店への依存度は高まる。しかし、出版社の側はそれをあまり気にしているように見えない。しかし、注意しなければならないことは、出版社の収益性向上は、アマゾンの低収益戦略によって可能になっていることだ。いつまでもこのままいけるとも思えない。 (鎌田、09/30/2013)

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