「EPUB3固定」が牽引する新世代のE-Book (♥)

Kitaboo2インド・ムンバイの出版ITサービス企業、ヒューリックス・システムズ (Hurix) は、E-Bookプレイヤー Kitaboo にPDFデータをEPUB3固定レイアウトに自動変換する機能を追加したとフランクフルトで発表した。米国出版界は2014年をめどにEPUB3対応を急いでいるが、最大の課題は、固定レイアウトを前提とした大量のPDF書籍(教科書や料理本など)であると言われる。[全文=会員]

ワンクリックで<PDF→EPUB3固定>変換

KItaboo「リッチで対話的なE-Bookを学生や読者に向けて制作するためのフォーマットとして、固定レイアウトのEPUB3に目を向ける教育出版社や商業出版社が増えています。」とヒューリックス社のスブラマニアン副社長は述べ、「複雑な教科書、図版入りの本や子供向けの絵本で優れた読書体験を得るには印刷本のレイアウトをそのままE-Bookで表現できなくてはなりません。」と語っている。Kitabooは、同社のクラウド・ベースのHTML5オーサリング/管理/出版プラットフォーム Dicteraなどとともに出版社向けのソリューションを構成する。

ヒューリックスは2000年に創業し、世界的に展開しているテクノロジー企業で、主にピアソンやマグロウヒル、アシェットなど米国と欧州の出版社を顧客とし、教育系コンテンツを多く手掛けている。今回の発表は、米国のAAPやIDPFのEPUB3推進イニシアティブに対応したものだ。今月開催されたフランクフルト・ブックフェアでも、「EPUB3固定レイアウト」はITサービス企業が判で押したように強調していた。固定レイアウトは、日本ではマンガ(グラフィック・ノベル)用途が中心と考えられてきたが、欧米ではむしろ、教科書、実用書、カタログなど、対話型機能を盛り込む土台としての固定レイアウトに注目が集まっている。それこそがEPUB2(リフロー)からEPUB3への転換の最大の理由になる、という人さえいる。

Kitaboo3当然のことながら、教科書や実用書では本文と画像・図版、表組との厳密な対応が求められる。リフローと両立させることは困難で、そのためにEPUB3への移行を躊躇する出版者が少なくないのは当然だろう。そこでPDFが残ったのだが、PDFは重くて拡張の余地も事実上限られている。そこで独自フォーマットが成立する。それは悪いことではないが、標準でない限り、自ずと広がりには限外があった。EPUB3の拡張とベスト・プラクティスの積み重ねで埋めるしかなかったのだが、EPUB3拡張仕様がほぼ固まったことで、<PDF→EPUB3固定>へのニーズが確定し、ヒューリックスは現行の仕様の範囲で現実的な変換ツールをリリースしたものと思われる。

<EPUB3固定>は、HTML5+CSS3+JSをフルに使った教科書、あるいはマルチメディアE-Bookの製作コストを大幅に引き下げるだろう。同時に知識・技術集約的付加価値の集積を準備する。20年以上も前から考えられ、実験されてきた、ハイパードキュメントや expanded book が、分散ネットワーク環境に再登場する。日本からEPUB3に提案された「言語拡張」と「固定レイアウト」は、EPUBの存在する次元を一変することになる。

労働集約サービスは自動化される

click現実的な話をすると、まず文字組版の大半が自動変換に移行した。組版は奥が深く、凝れば限がないのだが、しょせんスクリーン上では、やりすぎは費用に見合わない。日本語もそうなるだろう。次に固定されたレイアウトが自動変換に移行する。自動変換が可能になるということは、遠からず無料になる(食えなくなる)ということだ。最も労働集約的なレイアウトの大半を進んで無料化することで、ヒューリックスは幅広い顧客と受注を確保するとともに、さらに付加価値の高い、プログラミングが絡む部分(対話機能のデザインと実装)に進むことになる。

感心するのは、労働集約的な部分を請け負うことで顧客を確保したインドの企業が、そうした需要の限界を認識して、着実に付加価値の高い上流に進んでいることだ。ムンバイやチェンナイには、アルゴリズムの才を競う頭脳が集まっており、労働集約的な仕事を自動化してしまう。<PDF→EPUB3固定>変換機能の開発では半年をかけて「ワンクリック」でいくところまで仕上げたという。これを鵜呑みにするほどの情報はまだないが、少なくとも従来の顧客に対して自慢できるようにはなったのだろう。こうした企業がさらにどこまで進んでいくのかが気になるが、日本のサービス企業も、「いつどこでどうやってお金を稼ぐのか」を考えておく必要があるだろう。出版社がインドに発注するようになるより前に。(鎌田、10/23/2013)

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