ブックフェアの熱気の裏側

dealsPublishers Weekly (10/11)によれば、今年のブックフェアで発表され、話題となった売買案件での、最大の買い手はハーパーコリンズ(HC)、最大の売り手(エージェンシー)は、ウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)だったという。PRHと対抗するHCは、フィクション市場のシェアを上げるべく、版権獲得で積極的な攻勢に出た。日本ではなじみのない、本の取引の世界を紹介してみよう。

ブックフェアと版権取引

FBF_logo明らかになった中では、Alix Christie の歴史スリラー 'Gutenberg’s Apprentice'、Katy Simpson Smith の戦争大作 'The Story of Land and Sea' があるが、100万ドル近いと言われる。「グーテンベルクの弟子」という題名に惹かれる前者は、発明秘話にセクシーな衣装を着せたものと言われる。ほかに話題作品として、ナチ党の理論家、アルフレッド・ローゼンベルクの最近発見された日記に基づいた 'The Devil’s Diary' (by Robert Wittman and David Kinney)がある。これらはもちろん、事前の交渉があり、FBFで発表したものだ。ここで発表することで、書店業界も対応を始める。

FBF_Brazil日本のトレードショウが外国のものとは違うのは、いまだに商談や成約が中心とならず、ローカルな発表とデモ、紹介、親睦といった、前段階(広報・宣伝)のイベントに止まっていることだろう。お祭りの雰囲気はあるが、誰もそこで巨大な取引が行われるとは考えていない。しかしフランクフルトは違う。世界の出版界のプレイヤーが年に一度、高額なチケットを手にフランクフルトを訪れる目的は、何よりも、そこで取引をするためだ。

経営者、版権売買担当者から、著者、エージェント、そして愛書家であることを誇るセレブ…。言語、人種、ファッションの多様さが目を惹く。こんな場は米国にもなく、間違いなく世界一と言ってよい。同時に広大な空間を効果的に使い切る、洗練された展示設計と、案内から警備までの運営の手際の良さも、メッセが重要な産業である国であることを知らされる。(写真はすべてボール紙でできている、今年のゲスト国ブラジル館のインスタレーション)。

出版社に必要なのは商売人とギャンブラー

FBF_exibitフランクフルトでは「本の取引」の現場を感じることができる。そこは市(いち)であり、少しでも有利な取引をしようと鎬を削る。売るほうは良い相手に好条件で売りたいし、買うほうは自らの消費者・顧客に売れる良い商品を確実に手に入れたい。それには世界中から関係者が集まる場が必要だ。ポーカーフェイスの駆け引きがあり、ギリギリの判断が迫られる。自然とオークションのような熱気と、真剣勝負の興奮が生まれる。高額取引は時間をかけて進められることが多いが、FBFがゴールであり、勝利宣言の場となることが少なくない。

じっさい、ブックフェアの会場には、カジノのような雰囲気がある。「インテリがつくって高級賭博師が売る」といったら適切だろうか。もちろん、それは(金額的に)トップレベルの話で、残りは落ち着いた雰囲気で行われる、じっくりとした取引が大部分だ。これが本のビジネスの一面であることは、頭では知っていたが、肌で感じると迫力が違う。グランド・キャニオンの写真と実物のようなものだ。

こうした場で日本企業が活躍していないのは、やはり勝負で結果を出す(引き受ける)タイプの人材がいないためだろう。本気で日本のコンテンツを世界に売り込みたいのならば、それは必要だ。著者、編集者でなければ、世界の出版市場で必要なのは商売人なのである。(鎌田、10/12/2011)

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