「アマゾンとは対決でなく協力」と世界最大の出版社 (♥)

cooperationペンギンとの合併で空前の企業規模となったペンギン・ランダムハウス(PRA)のマルクス・ドーレCEOが、フランクフルト・ブックフェア(FBF)のパネルで行った発言が話題になっている。最近の出版イベントで繰り返されたアマゾン悪玉論に対し、公然と擁護し、賞賛さえしたものだ。これは何を意味し、どういうインパクトを与えるものだろうか。[全文=会員]

FBF_logoドーレCEOはこう断言した。「基本的に、(アマゾンとの) 関係は協力であって対立ではありません。私たちはできるだけ多くの人に本をお届けしたい。もちろん、互いに解決しなければならない問題はありますが、それは問題ではない。基本的に(市場の拡大という一点で) 一致しており、残りは販売条件についての交渉で具体的に解決していけばよいのです。」

“悪玉”アマゾンを「公然と」賞賛

Dohle「何よりも、Kindleが海賊版の脅威からわれわれをほぼ完璧に守ってきたことを忘れるべきではありません。非常に便利な KindleシステムとすばらしいWi-Fiデバイスは、巨大な選択肢を提供し、本を購入する上で魅力的な利便性を提供しています。それは出版の世界にとってほとんど贈り物とも言えるもので、その新しい本のバリュー・チェーンを始めた時には、E-Bookビジネスは細々としたものでした。イノベーションを導入したのは彼らであり、その成長には十分な理由があります。私は国内的にも国際的にも、アマゾンとともに成長していけると考えています。」おそらく出版界の大立者から聞いた最大の賛辞だろう。

価格談合問題で司法的決着をみたエージェンシー価格制の崩壊について、ドーレCEOは「この件はもう終わりました。エージェンシーの時代があり、それは新しい実験でしたが、E-Bookのディスカウントが再開し、私たちは適応しようとしています。これについては非常に分析的なアプローチを試みています。私たちの使命は、著者の収入を向上することですが、それは実際に達成していました。会社にとって大事ではありません」と述べて影響を否定した。

最近のアマゾン排撃論は、著者エージェントの巨人、アンドリュー・ワイリーが The New Republic のインタビューで述べたことに代表される、低俗な商業小説をはびこらせ、職業作家の地位を卑しめ、書店を苦しめた、ということが中心になっている。かつてのように、やれ海賊を増やすだの、出版社から搾取するだのと言った話は聞かれなくなった。つまり、かつてのものが、大手出版社が代表した「オール出版」ではなく、版権と紙書籍を商う伝統的出版ビジネスからのものといってよい。これはかつてのペーパーバック革命の時代を想起させる。情報の生産・流通コストが劇的に下がり、市場が爆発的に拡大した時に起こる現象だ。出版の良心を代表する人々の声だけに、説得力があるが、それは「健全な批判」以上のものではない。結局のところ、ほかのあらゆるビジネスと同様、最終的にはカネで動く。

新会社のドーレCEOは、RHの親会社ベルテルスマンのロジスティクス担当で頭角を現した、出版界では異色の経営者で、顔もよいが頭もいい。アマゾンと対決するなど愚の骨頂という姿勢は保守的な出版界からは嫌がられるだろうが、数年内に5大出版社のすべてがこうしたタイプになってしまうのではないだろうか。(鎌田、10/11/2011)

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