「自主出版ポルノ」規制の波紋 (続)

cat_amazed英国の保守系タブロイド紙 The Daily Mail やサイトの The Kernel が始めた「反自主出版」キャンペーンの余波が収まらない。後者はポルノだけでなく「ホロコースト否定書籍」にまで対象を広げ、「悪書で稼ぐ」アマゾンをヤリ玉に挙げる。他方、E-Bookコミュニティでは出版・販売ルールに関する議論が活発に。とりあえず2つの意見(あるいは見方)を紹介しておきたい。

「良心」かアルゴリズムか

Richard Stephenson英国でタブレットとPC向けに自主出版のプラットフォームを提供している YUDU Media のリチャード・スティーブンソン氏は、Digital Book World (10/14)で「3つの簡単な検閲ルール」を提案している。委託販売制が事実上否定された現在、書籍の販売は小売店と消費者が直接当事者となっており、ストアは原則的に瑕疵責任を負っているが、法律が許容するポルノの販売は法的問題ではない。それにヤリ玉にあがった自主出版物は一部に過ぎない。それにしてはストア側は過剰ともいえる対応をした。万単位の本をいちいち読んでチェックすることなどできないからだ。スティーブンソン氏は、こうした問題は YUDU Freeが2008年に経験し、検討したとしている。

YUDUの手引きは「コンテンツは、あなたの友人や家族に見られても問題のないものですか」「職場で上司や同僚に知られても問題のないものですか」「繁華街やショッピングモールで公然と売られてよいものですか」と書いてあり、さらに「暴言 (abusive words)」ボタンや検索が効果的に問題コンテンツの「出版」を抑止していると述べている。しかし、同じ方法がアマゾンやKoboなどにも有効かどうかは定かではない。少なくとも、販売者として最大限の努力を払っているということだろう。

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では「羞恥心」に訴える以外の程度客観的な判定基準はないのだろうか。本のアイデンティティをコンピュータ解析する Book Genome Project の創始者、アーロン・スタントン氏 (BookLamp)は、今年3月『フィフティ・シェイズ』の“セクシー度”を判定し、ロマンス小説の分類を借りた「エロチカ」であること(?)を実証して見せた。1000語ごとに性的語彙の含有量を3段階でチェックしてシーンを色分けし、さらに全体の性格をチャートで判定するという方法を使ったものだ。彼はデータベース化された15,000点の自主出版タイトルと10万点以上の在来出版タイトルを比較し、後者で1.11%に過ぎない「エロチカ」が、前者では28.57%に上るとしている。またそのうちの10点に1点は、性的倒錯を扱っている可能性が高いとした。もちろん、サンプルの取り方の客観性などの問題は残る。

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オンラインサイトでの分類はどうだろうか。米国の自主出版の草分けである Smashwordsは、約25万6,000点余りの、あらゆる種類のタイトルを扱っているが、約18%にあたる4万8,000点あまりが「エロチカ」に分類されている。これは発行者の自己申告によるものなので、必ずしも正確でないことはストアも認めている。ポルノであれなんであれ、出版物は尊重されるべきだが、青少年のメディアに触れないような注意義務と抑止手段は必要とされるだろう。

自主出版がポルノを多く含むのは事実だとしても、両者を結びつけるのは、旧メディア(の信奉者)による悪意ある攻撃以外のものではない。機械式印刷や製紙法の革新など、出版における敷居が下がるたびに低俗・剽窃出版物が一時的に氾濫するのは毎度のことであり、それは「自主出版」とは無関係な社会現象だ。(鎌田、10/24/2013)

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