購読モデルの持続可能性を考える(♥)

Oyster_logo2購読モデルで読者が気にするのは、月千円あまりでどれだけ読める(ものがある)か。著者/出版社が気にするのは、実際にどういう配分でいくら入ってくるかということだろう。これまで後者については情報が皆無だったが、自主出版支援サイト Smashwords のマーク・コーカー氏がパートナーである Oyster との契約スキームを明らかにしてくれた。著者にとって、条件はかなり良い。[全文=会員]

著者・出版社は無条件に儲かる!?

Oyster2どのくらい良いのか。読者が本の最初から10%以上読み進んだら、小売価格の60%を受け取れる。これは Smashwords の著者がアップルやB&Nのような大手ストアを通して販売した際の取り分と同じだ。Scribd と契約したパーパー・コリンズも「完全に満足」と言っていたが、販売に近い条件ならまったく文句はないだろう。Kindleの「立ち読み」も10%までは可能なので、10%を超えたら買ったものとみなすというのは、これと同条件だ。

これではたして持続可能だろうか。 The Digital Reader のネイト・ホフェルダー氏は、米国人の平均的読者(16歳以上人口の75%)で、読書人口が年平均15冊を読み、中央値が6冊であったというピュー・センターの調査(2012)をもとに、Oyster モデルの成否は、中央値以下のユーザーのシェアを多く出来るかどうかにかかっていると推定している。

たしかに、年間60ドル分しか消費しないユーザーは、販売モデルよりも確実に利益をもたらしてくれそうだ。本の平均小売価格が10ドルで一人が15冊分を消費すると仕入費用が90ドルになるので、仮にアップルやGoogleへの支払が年間36ドルにもなるとすると、プラットフォームの決済窓口をスルーできなければ完全に赤字だ。そのあたりも知りたい(なお、現在無料購読キャンペーンを行っているが、プラットフォームは iOS7、米国発行のクレジットカードのみ受け付けている。)。

スタートアップに最適、既存ストアに手が出しにくい

scribd-SF-section購読モデルの成立根拠がしだいに見えてきた。これがビジネスとして成立するかは、もちろん読者に満足を与えられるかどうかにかかっているが、それには十分なタイトルの選択肢が必要だ。読者は月10ドルのコストで、1冊、2冊の本に失望して読みたい本に出合えない(あるいは買う気も読む気もなくなる)リスクを回避できる。あまり有名とは言えない版権保有者にとっては、リスクはほとんどなく、新規の読者と出会える可能性は高まる。既存のストアにとって、販売と完全な購読の兼営にはリスクに見合うプラスが実証されていない(アマゾンの対応で明らかか)。

さて、「趣味は読書」という、見栄っ張りな日本人の平均的な読書量を考えれば、購読モデルが日本で成立する可能性は、米国よりむしろ高いのではないか。購読は売るのと同じ、売るより儲かる、ことが納得できれば、嫌がる出版社はいないと思うが。(鎌田、10/27/2013)

参考記事

 

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