エージェンシー価格制をめぐる攻防の記録

balanceアップルと出版大手5社に対する集合訴訟事件の処理に伴う賠償額計算の過程で、各社の販売金額について最も正確な推定額が得られた。それによると、2年と50日の間の5社のE-Book出版点数は、市場全体の6%であるのに対し、販売額は15.5億ドルで推定4割。6社で過半を超すが、これでもエージェンシー制の拡大を阻止したアマゾンの市場支配力をなんと形容したらよいか。

スタンフォード大学のロジャー・ノル名誉教授を中心としたエコノミストのスタッフは、裁判所の要請を受けて、被告が負うことになる賠償額の算定作業にあたり、出版5社が消費者に返金すべき金額を約3億800万ドルと判定した。この作業は非常に広汎かつ徹底したものであったようで、E-Bookを販売しているアマゾン、B&N、アップル、ソニー、Kobo、Googleおよび BAM (Books-A-Million)から聞き取りを行い、対象期間中の販売タイトルと収支などを把握した。これは通常の市場調査では考えられない。

同チームの調査結果の詳細は、裁判所の命令によって公表を止められているというが、今回明らかにされたのは以下の通り。2010年4月1日から2012年5月21日までの2年と50日の間に、

  • 134万8,12点(教科書を除く)が少なくとも1冊以上販売され、アマゾン以下のトップ4社が98%を販売した。
  • 大手5社(RHを除く)が販売していたのは8万3,463点で、総タイトル数の約6%。金額では15億4,822万ドル。

Sales_GrowthBookStats からごく大ざっぱにみると、2010年に10億ドル規模だった米国のE-Book市場は、20億、30億と拡大している。2011年は前年比2.5倍近い成長を経験した期間で、期間中の総売上は38億ドルくらいではないかと推定される。15.5億ドルを売上げた5社のシェアは4割あまりか。ランダムハウスを加えれば優に過半数を超えるシェアを持った6社がエージェンシー価格制でまとまっても、残りの出版社は動けなかった事実は、アマゾンの市場支配力の大きさを物語っている。

各社の売上と賠償額を見ると、ペンギンは5億ドル近く売上げて1億ドルあまりを失ったが、約2年で5億ドルを売ったというのは立派なものだ。2位のサイモン&シュスターが約3億ドルで、他はすべて2億ドル台。シェア・トップのRHは賢明にも談合に参加せず、後でエージェンシー価格制に“転換”したことで、訴訟の対象からは外れ、賠償から逃れたが、もし参加していたら、おそらく7億ドル以上の売上に対して2億ドル以上の賠償額となったと推定される。これが危機管理というもの。(鎌田、10/29/2013)

■ E-Book販売収入と賠償額:  2010年4月1日~2012年5月21日 Publishers Weekly, 10/25による)

 被告企業 E-book売上* 賠償額の割合** 賠償額
アシェット $280,353,383 19.6% $54,971,899
ハーパーコリンズ 279,204,694 22.2 62,033,851
マクミラン 212,238,705 8.0 17,013,853
ペンギン 481,408,045 22.0 105,779,657
サイモン&シュスター 295,019,073 23.1 68,009,155
合計 $1,548,223,900 19.9% $307,808,414

* ストア7社の取引記録に基づく(一部推定)
** 実売価格に基づく価格談合の結果の加重平均値

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