アマゾンは巨大出版社になるか?

Kindle-Singles_0アマゾン Kindle Singles は、これまでのところ着実に地歩を固めている段階で、爆発的な成功には至っていない。しかし、TOCの創始者で現在は評論家・コンサルタントのジョー・ワイカート氏は、これをアマゾンの戦略的な布石として評価し、アマゾンが出版を支配するシナリオを描いている (Digital Content Strategies, 10/21/2013)。日本でも始めた「連載」(Serials)とも関係が深いので紹介しておきたい。

ワイカート氏のシナリオ

1.コンテンツに人為的厚化粧を施す慣習を止める
「自然な長さで表現された、人を動かさずにはおかない考え」というのがコンセプトのシングルは、じつに秀逸なものだ、と彼は評価する。これまで書籍編集者は、30ページの文章を読んで感銘を受けた場合には、なんとかこれを300ページの本に膨らませられないかと考えるのが常だった。書棚での存在感が持つ物理的、心理的な認知の作用は、抗いがたいものだったのだが、「短いほど安っぽい」という既成概念を、まず編集者が捨てるべき時にきた。

Matwood_singles2. コンテンツの注目期間は短縮している
10年前には存在していなかった、たぶん誰でも、ショート・コンテンツを読めば、かなりの興奮を覚えるだろう。今日ブログは非常にポピュラーになり、それからTwitterが140字の世界を爆発的に広げた。ニュースマガジンの The Weekや、学生向けの Cliff's Notes は、まさに短さのゆえに人気がある。すぐに読め、すぐに話題を変えられるものだ。インターネット時代に最適なのは、クイック・コンテンツで、Kindle Singles はそこにフォーカスしている。もちろん、この世界は軽いブログ情報が氾濫しており、ブランドを確立するまでが容易ではないが。もしできれば。

3. アマゾンが巨大出版社になる
ワイカート氏は、これまでアマゾンが一貫して「中間」を排し、マージンを絞り込んでいたことに注意を喚起し、本に付加価値を与えることができない出版社をアマゾンが排除する力を持つようになる、と主張する。アマゾンは著者に大きなマージンを約束し、マーケティング力を持ち、次々と新しいブランドを立上げている。当たり外れはあっても、アマゾンは着実に巨大出版社へと成長する。

4. 競争相手(出版社・書店)を撤退に追いやる
彼は、巨大出版社となることで、自らは手を下すことなく、出版社も書店も撤退を余儀なくされるだろうと考えている。供給をほぼ独占した1990年代のマイクロソフトどころではない。小売/流通も独占しているので、シェア拡大圧力は倍加されると彼は言う。たしかに、積極的に出版社・書店を潰そうとしなくても、衰弱→撤退という可能性はないわけではない。

5. アマゾンがショートの価格を引き上げる
アマゾンは出版ビジネスで利益を上げていないが、短期的利益には結びつかなくても、長期的利益の可能性に結びつくことはやっている。ウォール街のアナリストが予想する通りだ。ウィルカート氏は、アマゾンが永久に薄利(あるいは赤字)販売を続けるとは考えない。前項の条件が達成された時には、ショートがチープを意味しなくなるだろう。というのが彼のスキームだ。

jeff-bezos-amazonショート・コンテンツの重要性については筆者も同意見。何よりも市場のトレンドを誰よりも知る立場にあるアマゾンが、量と質を慎重に判断して育てている市場だ。将来の大市場となることは明らかである以上、系統的に出版のニッチ開拓を続けているアマゾンが手をつけたのは当然だろう。しかし、「巨大出版社」以降は賛成しかねる。理由は別記事で。(鎌田、10/28/2013)

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