アマゾンの永続革命と21世紀の出版(1)

logo_amazon-150x100その登場以来、アマゾンは出版の伝統的秩序を揺さぶってきた。Kindleが出版の後半(流通)だけでなく前半(出版)にもイノベーションをもたらしたことで、毎週のように新しいサービス/プログラムを展開している。そしていまアマゾンが巨大出版社になるか、そして出版と流通を独占する怪物的存在として君臨するかどうかは、21世紀の出版をめぐる最初で最大のテーマと考えられている。[1/2]

1. ニューヨークの蹉跌!?

ジョー・ワイカート氏の問題提起(「アマゾンは巨大出版社になるか?」本誌10/28)は、Kindle Singles が突破口となる可能性を指摘した点を除けば、目新しいものではない。アマゾンが主張する、新しい付加価値の創出による「省略可能な中間」の排除、言い換えれば著者と読者をつなぐサプライチェーンの統合が完成するかどうか、その時に何が起きるかについて、まったく心配していない業界人は少ないだろう。

Napoleons_retreat_from_moscowアマゾンの出版事業は2011年、シアトルとニューヨークの2本部体制で本格的にスタートした。シアトルは主としてデジタル指向のニッチを受け持つのに対して、NYは大手出版社と同様、目抜き通りの書店にも置ける重厚長大の在来型出版を目ざした。そのために名門タイム・ワーナーの元CEO、ラリー・カーシュバウム氏を招聘したことも大いに話題となった。同氏が退任を表明したこと、その理由が「アマゾンでは書店に置く本を売れない」ためらしいと噂されたことで、NYの出版界が色めき立ったことは言うまでもない(Shelf Awareness, 10/25)。その辺の事情は、大原ケイさんの「アマゾンは一般書の出版社として失敗したのか?」(マガジン航、10/29)、あるいはPublishingPerspectives におけるポーター・アンダーソン氏の丁寧なフォロー (10/29)に詳しいので、ぜひお読みいただきたい。

シアトルのニュースは毎週のように聞こえてくるが、最も資源を投入したはずのNYのニュースはほとんどない。それも道理で、B&NやBAMといった大手書店チェーンや少なからぬ独立系書店がボイコットし、シェアにして6割あまりのチャネルが使えなくては当初の目論見の達成のめどは立たないし、著者やエージェントとの関係も作りにくい。書店流通の閉鎖性もあるが、それ以前にE-BookはKindleで、紙は一般でという差別化の仕方がまずかったと言うべきだろう。一人でも多くの読者へという著者の期待(あるいは出版の原理)に応えず「取扱い拒否」という書店の反則技を誘発したのは自業自得だ。

アマゾンは、NYオフィスの縮小・撤退はないとしているが、歴戦の名将ラリー・カーシュバウム発行人の後任が、アマゾン生え抜きの西のチーム・リーダーで業界と接点のない、ダフネ・ダーラム氏の昇任というのでは、保守的な出版界が「撤退」と受け取っても無理はない。出版の総本山であるNYに進出したアマゾンの重圧を感じていた業界にとって、この「挫折」は、モスクワを前にしたナポレオンの敗退にも比べられているほどだ。よほど嬉しかったのだろう。(鎌田、11/11/2013)

 

以下は [2/2] (会員向け)をご覧ください。

2. 焦土戦術もマジノ線もアマゾンには通用しない

3. アマゾンは巨大出版にならず、旧秩序の自壊を誘導する

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