米国でE-Bookは本当に失速したのか?

bisg_consumercover_2013_1_medium米国出版業界のシンクタンク BISGが行った最近の調査 (Vol. Ⅳ-2)によって、E-Book市場の成長が販売部数で30%、金額で15%というラインで停滞していること、また消費者が紙とデジタルの(二者択一より)バンドルに高い関心を持っていることなどが明らかになった。また、デバイスについては、アマゾン/Kindle専用機の強さを示している。E-Book市場が「停滞」に入ったと受け取られやすいが、それは大きな誤解を招く。

2013年Q2失速の謎:事実か、季節要因か、視界不良か…

プレスリリースによると、E-Bookの停滞を示す上記の数字のほか、主な内容は以下の通り。

  • 消費者は印刷本とデジタルのセット販売(バンドリング)に強い関心を示しており、回答者の48%が「買いたい」と答えている。
  • 半数をわずかに超える回答者は、無料ないし再販売のE-Bookに関心を示している。
  • 消費者は購入に際して、在来の出版社から発行されたものと独立系のものとを区別しない。
  • 絶対数は少ないが、紙とデジタルを交互に購入する人が増え、後者だけを購入する人は減少している。

「米国における全ての書籍購入・読書の50%あるいは80%にも達すると考えられていたE-Bookは失速した。」Digital BookWorldのジェレミー・グリーンフィールド編集長はこう書いた。(10/30)  しかし失速と断定するには、さらに来年のQ1の数字まで待つ必要があるだろう。それに高精度の市場データ・トラッキング・サービスをもってしても、2割あまりは捕捉されていない可能性がある。

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BISGが定期的に行っているデジタル読書動向調査 (Consumer Attitudes Toward E-Book Reading)の最新版 (Vol.Ⅳ-2)について、BISGのレン・ヴラホス事務局長は、これまでにない調子で次のように述べている。「4年にわたる消費者の動向を示すデータは、E-Bookの消費が明らかに初期採用者である“パワー・リーダー”を超えて読者の主流に広がったこと、同時に印刷本も多くの消費者に人気のあるフォーマットであり続けており、一部の分野でその傾向が強いことを明確に示している。」

Diffusionofideas調査を担当したニールセン・ブックリサーチのジョー・ヘンリー部長は「4年にわたる年次調査の結果は明らかにE-Bookがイノベーション曲線の終わりにさしかかっており、合理的に予測可能な消費パターンに納まってきた。将来の成長可能性は、とくにこれまでデジタルにあまり積極的でなかったユーザー層での価値感の向上にかかっていると思われる。」と述べた。

イノベーション曲線は、ITの普及ではよく使われる公式だ。マーケティングの専門家はすべてこの曲線で説明する。筆者は3年ほど前に、E-Bookは単純にこの普及サイクルにはあてはまらないと指摘した。つまり、デジタル化の波は連続的、波状的に押し寄せ、次第に印刷本の不得手・不十分な・不経済な領域を置き換えていき、それによりデジタルが出版の主流になる、という予測だ(下の図を参照)。例えば、今日でも教科書、実用書、料理本などは紙が圧倒的だが、数年後には状況は一変しているだろう。すでにデジタルはフィクションで紙よりも優勢になっている。これは専用E-Readerに最適なコンテンツだ。出版の場合は、新しいタイプのコンテンツになるので、市場統計のレーダーには映らない時期がある。

急成長は新技術/新市場で生まれる

InnovationLifeCycle所有する本と消費する本、使う本とでは、後者が圧倒的に大きい。デジタルは成長志向のビジネスモデルだ。物理的スペースを占有する紙には供給と成長に限界があり、ベストセラー狙いの商業出版には大量廃棄が伴う。4年間のE-Bookの実績は、ただ単にデジタル革命の第一幕をみせたものに過ぎない。そこでは印刷本が死ぬことはなく、ただ返本や廃棄が減り、自主出版や売れるはずもなかったフィクションがE-Bookで開花した。ノンフィクションのデジタル化はフィクションの半分にも満たない。しかし、それで終わりではないのだ。

さて読書デバイスの保有を聞いた質問では、Kindleの専用機が40%に近く、iPadの27%を押さえてトップ。しかし、購入意向では前者が3%、後者が8%で、変化の兆しが見える。Kindle Fireは保有率25%と8%、Kindle以外の専用機では、Nookが10%あまり、購入意向は2%。Kindle以外のAndroidタブレットは、13%と6%、Nookは5%と2%、iPad miniは5%と7%、マイクロソフトSurfaceは1%と5%。

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以上を整理してみると、専用E-Readerでは現状が50%で購入意向は5%と、ほぼ頭打ちと言ってよいのに対し、タブレット合計では、現状が76%、意向は36%と100%を超える。他方で、ピュー・センターのタブレット保有率調査では、2013年半ばの保有率は約3分の1といったところで、もちろん100%にはほど遠い。E-Readerと違って、タブレットは (1) 短期で買い替えられ、(2) 必ずしも使われず、(3) しかも読書に使われる可能性は高くないということだ。タブレットにおけるメディア・コンテンツの競争は、E-Readerとは比較にならないほど熾烈になる。(鎌田、11/05/2013)

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