アマゾンは書店の敵か友か (2)動機を考える(♥)

Black-Olive-Branchアマゾンはスケールが大きすぎて、一般的には理解困難な企業だ、ファンシーなガジェットで知られるアップルや、もっぱらネット内に生息しているGoogleなど、莫大な利益を上げているライバルと比べ、伝統的な商売の人からは嫌われること甚だしい。アンフェアな安売り、脱税、ショールーム化…。小売店を地上から一掃する気ではないかと思う人さえいる。[全文=会員]

オリーブの一枝か、それとも罠か

korb2blogoそんなアマゾンが投げた Amazon Source という書店への“オリーブの一枝”は、予想通り大きな波紋を投げかけている。書店を陥れる罠だという敵意に満ちたものから、理解を得られず、成功しないという懐疑的なものまであるが、全体として、アマゾンの意図や結果について、否定的な見方が多数を占めると思われる。しかし、筆者はアマゾンの意図が(少なくとも)邪悪なものではなく、長期的には街の書店をパートナーとする可能性はアマゾンのビジネスモデルからみても小さくないと思われる。B&Nのような大型店が善玉で、オンラインだから悪玉などということがあるわけがない。大型店の進出で消えた街の書店もあれば、共存できているものもある。“まともに”ぶつかって壊れたからといって、相手を非難するのは生産的でない。結局はマーケティングの問題だ。

まず、プログラムの内容を再確認してみたい。アマゾンは2つの選択肢を示している。

  • 任意のKindleデバイスを最大6%のマージンで販売する(割引率は任意)。Kindleアクセサリは最大35%、デバイスを通じて販売されたコンテンツからは10%のマージンが得られる。
  • 任意のKindleデバイスを最大9%のマージンで販売し、アクセサリは最大35%。コンテンツのマージンはなし。なお、いずれのケースでも書店は6ヵ月以内なら返品自由でノルマはない。

米国で同様のプログラムを1年あまり先行させているKoboは、デバイスについて5%、コンテンツについて8~18%を提供する。これまで500店あまりが参加し、1,000店に拡大する計画。アマゾンに対する対抗意識もあって、書店の支持はあるようだが、売上は期待ほど上がっていないようだ。Koboとしては、出遅れている米国市場でアマゾンを追撃するために書店とのパートナーシップを必要としているのだが、もともとユーザー・ベースが十分ではないので、コンテンツの販売力という点で書店の期待に応えられていない。互いに頼りない存在。他方、英国でアマゾンと組んだ書店チェーンの Waterstones は「満足」の意を表しているので、少なくともある程度は売上も立ち、損もしていない自信もあるのだろう。

アマゾンにとって書店はパートナーと考える理由

hydrosheds_amazon_largeAmazon Sourceは(アマゾンの源流)を意味する。アマゾン川は流量もさることながら、オーストラリア大陸の面積に匹敵する広大な流域面積で知られる。無数の支流が毛細血管のように水を運び、蒸発した水はまた降雨となって流域を潤すことで熱帯雨林のエコシステムは成り立っている。何の根拠もないが、アマゾンがそうした巨大でダイナミックなエコシステムの一部として書店を位置付けている可能性は十分にある。これは書店をアフィリエイト・ネットワークに加えることと理解することができる。出版流通において地域書店の役割は、そのシェア以上のものがある。図書館と同様、読者には多様なチャネルと出会いの機会が必要なのだ。10%は書店マージンとして低いものではない。出版社が提携するとしても、10%は出したがらないだろう。

結局問題は、「書店が使い捨てにされ、顧客を奪われる」リスクはないかということだ。この点で、アマゾンへの信頼は高くない。ここでは以下を考察すべきだ。

  1. デジタルと紙はどういう関係にあるか。
  2. 消費者はフォーマットをどう選ぶか
  3. 紙の本を購入する際、消費者はストアをどう選ぶか

bookstoreということだろう。書店関係者は、デジタルと紙が相容れないもので、消費者は安いほうを選ぶ、と考えている。しかし、現実にはデジタルは本の消費拡大に貢献し、紙の本への需要は根強く、一方的にデジタルに傾斜することはなく、そしてオンライン・ストアの価格は厳密に比較するが、リアル書店には一定の付加価値を認め、地域の書店では安売りのベストセラー本以外のタイトルを買う、という傾向もみられる。たしかにアマゾンは相対的に安いが、値引き率が大きいのは一部のベストセラー本ばかりで、ロングテイルの本はあまり変わらない。街の書店のライバルは、アマゾンよりは大型店だという見方も成り立つ。そしてアマゾンもそうした判断に立っている可能性もある。

アマゾンが小規模書店を大事にしたい理由は少なくない。第1に地域の優良顧客を持ち、第2にデポとして印刷本のオンデマンド出版に活用でき、第3にネガティブ・イメージをかなり払拭できる。アフィリエイト・マーケティングの成功の鍵は、エンゲージメントであり、それは実績によって生まれる。書店が冷静に判断できるようになれば、状況が変わる可能性は十分あると考えられる。(鎌田、11/21/2013)

アマゾンは書店の敵か友か (1) Amazon Source

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