アマゾンは11月6日、独立系の書店や小規模小売店がKindleを販売することによって、デバイスの販売マージンとコンテンツ売上の10%を得ることができる提携プログラム Amazon Source を発表した。Koboが同様の協業モデルを提供しているが、10%はそれより書店に有利な条件。しかし、アマゾンへの宿怨に燃える書店の多くは、猛烈な批判を浴びせている。浸透・拡大には時間が必要のようだ。
Waterstoneモデルをベースに独立系書店にアプローチ
このプログラムに参加する書店/小売店は、Kindleのデバイスとアクセサリを小売することで収益を得るか、書店は顧客がデバイスを購入して以降2年間、それを使って購入したKindle書籍の10%を受け取ることができるオプションを行使できる。また、販売に関してノルマはなく、半年以内なら無条件でアマゾンが在庫を買い戻す。「Amazon Source があれば、もうE-Bookにするか、ひいきの地元書店のどちらから買うかでお客様が迷うことはありません。どちらもあるのですから。」とラス・グランディネッティ副社長は述べている。しかし、州によっては課税問題のために「現時点では」資格が得られないとしている(リリースおよびFAQ参照)。
アマゾンは毎週のように新しいサービスやキャンペーン・プログラムを発表している。これだけやっていて、一貫性がとれるものだろうかと思うが、一つの部分はピタリと全体のサービス体系に整合するようになっていて、つまりはタイミングまで推し測って周到に準備されたものだということが分かる。つまりシミュレーションはとうに終わり、投入条件が整ったので自動的に起動したという感じだ。アマゾンの決算発表のように、ドラマは何もないが、すべては連携し継続するもので、継続によって大きな意味を持つようになっている。メディアはこういうイノベーションを好まない。
Amazon Source は、2012年に英国の Waterstones書店と提携した際に構築したシステムをベースにしているという。1年前のWaterstonesとの提携は書店との提携プログラムのテストケースだったということだ。今回のリリースには、Waterstonesのジェームズ・ドーント社長の歓迎コメントが載っている。「それぞれの適性能力を組合せることで、顧客の皆様に最高のご提案をすべく今後も邁進していくことが私たちの共通した願いです。」この言葉には、アマゾンが信頼に足るパートナーであり、組んで損はなかったことが反映されていると思われる。書店側からすれば、E-Bookが欲しいという客を繋ぎ止めておくことができた。アマゾンでKindleを買ったユーザーは同じアカウントで印刷本も買う可能性が強いからだ。(写真=右はロンドンのウォーターストーンズ書店)
アマゾンのリリースには、すでにパイロット・プログラムに参加しているいくつかの書店関係者のコメントを掲載している。もちろん、アマゾンの意図を疑う関係者も多い。NY Timesは、日ごろ「ショールーム」としての被害者意識を募らせている人々の非難を伝えている。Koboと提携し、数百店が参加しているという書店協会(ABA) は、「信頼に足らない」と述べている。それらについては別にまとめてみよう。◆(鎌田、11/08/2013)
参考情報
- Amazon’s New Kindle Offer Rejected by Indie Bookstores, By Marcus Wohlsen, Wired, 11/06/2013
- Amazon Offer Met With Chilly Reaction From Indies, By Sydney Jarrard, ABA Bookweb, 11/07/2013
- An Offer From Amazon to Its Most Bitter Rivals, By David Streitfeld and Julie Bosman, New York Times, 11/06/2013
- Book News: Indie Bookstores Don't Take Kindly To Amazon's Kindle Offer, by Annalisa Quinn, NPR,, 11/07/2013
- Amazon Source Audaciously Courts Indie Bookstores As The Next Kindle Retail Outlets, by Ingrid Lunden, TechCrunch, 11/07/2013