米国における自主出版の成長と課題 (♥)

publish_or米国のメディア市場調査会社 Simba Information(コネティカット州スタンフォード)は11月1日、『自主出版の勃興とその影響』と題する調査レポートを発行した。消費者=読者側から見た調査によって、自主出版書籍が読書体験に広く深く浸透しつつある傾向が確認できた。キュレーションという大きな難関があるとしても、それらは徐々に解決され市場の拡大を支えていくだろう。[全文=会員]

読者・消費者サイドからの初の調査分析

simba_logo統計的に米国民を代表する2,000人の成人を対象としたこのレポートによれば、8.4%が少なくとも1冊の自主出版書籍の印刷版を購入したことがあり、同じく6%がE-Book版を購入したことがあると回答した。同社の『電子書籍出版 2013』によれば、商業出版物の市場において印刷本購入者はE-Book購入者の3倍に達しているので、自主出版においてE-Book消費はとくに大きいと結論づけている。「E-Bookの勃興は自主出版の勃興と完全に歩調を合わせて進んでいる」とシンバ社のマイケル・ノリス上級アナリストは述べている(→リリース参照)。同社では、自主出版市場の量的拡大によって、購入者のプロファイル分析、内容のカテゴリ分析が可能な規模に達していると判断した。

self_publishing_services「自主出版はあと少しは成長を維持するものの、著者の職業意識の低さとコンテンツの“供給過剰”に対する批判が消えることはない。」「一部の人が信じているように、消費者が進んでコンテンツの選別を行うとは考えにくい。それが実現するなら、読書人口のすべてが出版点数に合わせて評価に加わる必要があるだろう。」とノリス氏はコメントしている。本レポートには、ベストセラーとなった自主出版書籍のカテゴリ別分析、同消費者の詳細な統計分析、アプリ、E-Bookおよび印刷本の購入習慣、印刷とデジタルの購入意向等の定量分析が含まれている(価格は899ドル)。

デジタルの比率が高く、通常の書店を通さない自主出版は、通常の商業出版統計から外れる場合が多く、売上金額は点数以上に推計の域を出ない。しかし、自主出版本は量的には商業出版に近い水準に近づいており、現在の増加ペースが落ちるとしても、(米国の)発行点数の過半数を占めることは確実だ。そして全出版市場に占めるシェアも増加していく。商業出版社にとっては、デジタル自主出版の市場の存在は間接的な圧力として、しだいに重みを増してくるだろう。

成長がキュレーション問題を解決する

reading_catシンバのレポートが言うように、キュレーションの問題は最大の難関だ。しかし、完全な解決はもとより不可能としても、市場規模が大きくなれば、プロフェッショナルソーシャル(ボランティア)アルゴリズム(自動)による評価、選別のメカニズムが開発されていく。オープンな市場が存在するところでは、ほぼ例外なく、量が質に転化する量質転化の法則が働く。

そもそも商業出版社も「見つかりやすさ」では苦労しているので。かなりの部分、自主出版と共通するところもある。大手出版社は、版権エージェンシーによる“一次審査”を経たものから厳選して出版計画を練り、時間をかけて発行するが、一部のベストセラーが残りの赤字を回収するというロスが多いシステムを維持していけないと考えている。共通の課題に対しては、アマゾンから各種Webサービスまで、多種多様なソリューションが提供されていき、自主出版書籍に対するレーティングやブランド化も整備される。それはかつて活字印刷物に対する評価システムが生まれていったのと同じことだ。

そして、米国において「書評」が広く社会的に共有されることでサービス・ビジネスとして発展する素地は十分にある。日本の読書教育における「感想文」と対照的に、欧米では「客観的・分析的書評」が取り入れられており、書評に関するリテラシーはかなり高いからである。極端なもの、主観的なものを排するのは教育によるところが大きい。集合智を集約するアルゴリズムは、一定の環境の下では機能することが知られている。アマゾンなどはその方面の技術を進化させるだろうし、供給過剰を心配することはない。誤解を恐れずに言えば、デジタルには不足はあっても過剰はない。 (鎌田、11/05/2013)

参考:書評教育教材の例(ロドマン・フィルブリック氏のページ=リンク付)

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