「若者は印刷本が好き」という調査

student_readingインターネットに親しんだ青少年がどんな読書傾向を示すのかは、出版・メディア関係者が最も関心を示すテーマの一つだ。英国の Voxburnerという調査会社が16-24歳の青年(=1,420人)を対象に行った調査では、62%が、E-Bookより印刷本のほうがよいと答えたと The Guardian (11/25)が伝えている。だが、少し考えればこんな結果じたいには何の意味もなく、ただ漠然とした不安を伝えているだけだと分かる。問題なのは印刷本の限界なのだから。

 

cats-reading-books-L-O4uoP7最大の理由は「手に持った感触が好き」というもの。そして28%がE-Bookの価格が高すぎる(半額程度にすべき)と答えている。モノかコンテンツのどちらが好きか、では映画(48%)、新聞・雑誌(47%)、CD(32%)、ビデオゲーム(31%)でコンテンツ化に抵抗が少ないのに対して、印刷本には愛着が強いとしている。また価格に関しては、その価値に対して高すぎる(28%)というのが適正(8%)を上回っている。特定のデバイスに拘束される(20%)E-Bookに対して、簡単に貸し借りでき(10%)、パッケージされ(9%)、古本として売れる(6%)という印刷本の実用的価値も評価されている。

こうした調査は日本でも行われ、やはり「印刷本が好き」が優勢な結果が出ている。しかし、この結果を持ってデジタル化傾向が止まると考えるのであれば大きな間違いというしかない。

第1に、サンプルの読書傾向/購買動向(どんな本をどのくらい)、デジタル読書体験(有無と使用期間/頻度等)まで溯らなければ、意味のある情報は得られない。Voxburnerの調査では、45%がそもそもデジタル読書のためのデバイス(E-Reader、タブレット、スマートフォン)を保持しておらず、ストアでの購入に始まる読書体験を得ていない環境にある。45%が何らかの形で使用経験を持っていたにしても、被験者に比較させる調査としては大いに問題がある。デジタル化は急速であるが、そればデジタル読書を始めたユーザーが活発な消費を行っているためで、広く浅く普及しているわけではない。

第2に、印刷本を「好き」という若者が多いからといって、それがどういうことなのかを示さない限り、データは無意味だ。筆者も印刷本は好きだが、特定のタイトルを購入する際に紙を選ぶかどうかは別問題で、装幀、サイズ、価格、保持期間、実用性、古本価値などによって、デジタルを選ぶ場合は多い。高級セダンと軽自動車のどちらが好きか、というようなものだ。

マーケッターとして言わせてもらえば、実際には何の役にも立たない調査が行われる理由は、調査委託者あるいは調査機関が「そうあってほしい」と考えるバイアスを社会と共有するためということが多い。日本で言えば、政府が行う世論調査で「中国は好きか嫌いか」を聞くようなものだ。英国は米国に2年遅れてデジタル化を始め、3年でほぼ追いついた。フィクションに強い大手出版社は先行し、潤っているが、中小は遅れており、書店は不安を深めている。(鎌田、11/28/2013)

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