ジャーナリズム再構築への期待 De Correspondent (♥)

De Correspondent_logoオランダの若いジャーナリストが立ち上げた新しいコンセプトのオンライン・メディア・プロジェクト De Correspondent が欧米で話題になっている。クラウド・ファンディングで170万ドルというベンチャー基金並みの金額を調達したことがきっかけだが、ビジネスモデルよりも、人物とソーシャルな編集コンセプトが人々の熱い期待を集めたというべきだろう。[全文=会員]

クラウドで1.7億円を調達したオランダのメディア・プロジェクト

1 0V-N9EJPd_9ERQzOwpI0NADe Correspondent はまず「アイデア」としてテレビなどで紹介され、クラウドファンディングを使って「予約購読」を始めたものだが、編集者の知名度と読者の支持を背景にしている。ニューヨーク大学のジェイ・ローゼン教授は4月に「私が今年知ったなかで最も興味深いジャーナリズム起業」と呼んで注目した。9月には1万9,000人から年間購読料60ユーロと若干の寄付を得て正式にスタートすることができた「メディア」は、サイトを構築するWebデザイン・エージェンシーMomkai と契約してRespondens という専用のコンテンツ管理システムの開発に着手し、スタッフを雇用して立上げの準備に取りかかっている。

De Correspondent は「印刷や放送が持つ制約によって形成されてきた伝統的ジャーナリズムのDNAと決別するために」オンラインだけで発行される。調達した資金で契約した7 名の常勤と19名のフリーランサーは、それぞれが読者とソーシャルなネットワークを形成する。「読者=参加者」というコンセプトで、読者が持つ専門知識や 情報を生かし「持続的で意味のある関係を築く」というのは、クラウド・ソーシングのアプローチである。記者は読者とともに「庭」を育てていくことが期待さ れる。読者に100人の医者がいれば、一人の医学ジャーナリストが知り得る以上の知識となるという発想だが、記者の役割は、たんに一部の専門家から取材し て記事を完結させることではなく、情報と問題を共有し、共通のゴールへ向けて全体をリードしていくキュレーター的役割が求められる。

形態は「日刊だが、本日の最新ニュースを超えたもの」。分野ごとに分割された紙面ではなく、テーマ指向の構成。ビジネス的には、購読料だけで運営され、広告はとらない。またいくつかの記事をFacebookに掲載するほかは、メディアとしての広告もしない。「読者は最良の大使である」というコンセプトから、「読者は好きなだけ記事を他人とシェアすることができる」というが、詳細はまだ不明だ。最小限は自由な引用として、転載まで自由とする可能性もある。

形骸化した「報道」から調査・分析と問題共有へ

Correspondent_founder創業者のロブ・ウェインベルフ (Rob Wijnberg)とエルンスト-ヤン・ファウス (Ernst-Jan Pfauth)の二人は、ともに名門紙のハンデルスブラットのスピンオフ。前者は青年向けの NRCの朝刊編集長、後者はWeb版の編集長を務めていた。ニュース過剰時代にあって方向性を失っている「新聞ジャーナリズム」のあり方に疑問を感じていたロブは、表面的なニュースに追われるのではなく、「今日の世界を成している構造に光を当て、時間をかけて理解を深めていく」アプローチを可能とするメディアとしての新聞の再構築を考えた。ロブの考えは新聞社には容れられず、2012年9月にハンデルスブラットを去った。彼のコンセプトが多くの賛同を得たことはそう不思議ではないが、人口1,680万人、九州とほぼ同面積のオランダで、のクラウド・ファンディングの世界記録(メディア・プロジェクト)をつくるのは画期的なことだ。

breaking news新聞の売り物は、伝統的に "Breaking News" とされていた。しかし、現実にはほとんどがニュースソースとなる政府機関や大企業などから出される膨大な発表情報を「ニュース」として解説付で記事化することをルーティン・ワークとしている。複数のメディアが同じアプローチで紙面をつくっているので構成も内容も表現も似たり寄ったりとなる。そして記事の中身よりは「権威」を売り物(後ろ盾)とする傾向がある。コピーが限りなく無価値になるWeb時代に忌避されるようになるのは当然だろう。De Correspondent は、こうした「ニュース」は追わず、社会にとって新しい重要なことに継続的に取り組んでいくという。

ジャーナリズムは近代市民社会が生んだ「公器」としての社会的性格と、メディア・ビジネスとしての産業的性格の二面を負っている。De Correspondent は、二面性に引き裂かれることで衰退を宿命づけられたかに見える伝統的設備産業としてのニュースメディアと決別し、読者とのソーシャルな関係を構築することで「公器」の伝統を継承しようとするものといえよう。ソーシャルなジャーナリズムといえば形容矛盾でもあるが、営利事業であるメディア・ビジネスがそのままで「公器」とは言えない以上、これが社会的に期待されるところだろう。おそらくこうしたアプローチは増えていくと思われる。

21世紀におけるニュースメディア/ジャーナリズムの可能性を再構築しようと、ジェフ・ベゾス氏がワシントンポスト紙を買収したことは、今年の大きな話題だったが、このテーマにチャレンジするのは、もちろん成功したビジネスマンだけではない。(鎌田、12/05/2013)

参考記事

De Correspondent - responsive from Momkai on Vimeo.

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