テクノロジーが支えるNPOジャーナリズム First Look Media (♥)

idea2eBayの創業者、ピエール・オミディヤ氏のジャーナリズム・メディア新事業の内容が12月19日、明らかになった(→リリース)。名称は First Look Media (FLM)。最大2億5,000万ドルという規模もさることながら、注目すべきはメディアテクノロジー・ベンチャーとジャーナリズムの非営利事業という二本建ての構造だ。しかも影のプレイヤーがいた。それだけでもニュースだろう。[全文=会員

eBay創業者の見果てぬ夢はジャーナリズム

ネット・オークションをビジネスモデルとして初めて成功させたオミディヤ(オミダイア)氏は、1998年にeBayのCEOから退き、2004年に設立したオミディヤ・ネットワークを通じて、もっぱらソーシャル・インキュベーターとして活躍してきた。機能不全に陥った米国民主主義の現状を憂慮し、The Democracy Fund という基金を立ち上げている。彼が伝統的ビジネスモデルの崩壊で危機に立つジャーナリズムに関心を持ち、新事業を構想しているという10月の発表は、世界的な関心を持って伝えられていた。ジェフ・ベゾス氏がワシントン・ポスト紙のオーナーを引き受けた経緯とは必ずしも関係はないが、ネットビジネスの両雄が、社会的・非商業的価値を維持するためのビジネスモデルの再構築という最も困難なテーマに立ち向かうことになった。

OmidyarFLMは、当初資金5,000万ドルで設立され、ニューヨーク、ワシントンDC、サンフランシスコにオフィスを持つ。2つの独立した事業体を中心に構成され、「新しいメディア技術の開発」を目標とする営利事業と、公共の利益のために、独立した編集部がジャーナリズムを追求する非営利事業を持つ。つまり、メディアビジネスのためのツールを開発・提供して収益を稼ぎ、NPOを支えるというモデルだ。もちろん、テクノロジー企業はNPOを技術的に支えることになる。

アドバイザーのジェイ・ローゼンは次のように述べている。社会奉仕や公共的使命を帯びたジャーナリズム、それに伴う調査活動は、つねに何らかの支えを必要としてきた。広告や別の種類のニュース、ProPublicaのような寄付、Bloomberg Newsを配信するブルームバーグ社の専用端末のような営利事業などだ。FLMは、これらとは別の支援基盤の可能性を追求する。それはニュースや多様な見方、情報を作成・流通・利用するための技術に特化した営利企業だ。

広告モデルを最初から放棄した“現実路線”

greenwaldオミディヤの能力と財力、ネットワークは桁外れのものだが、ジャーナリズムは、勇気あるジャーナリストによってしかつくれない。FLMの構想には、元NSAの契約社員、エドワード・スノーデン氏を情報源とする世紀のリーク報道で世界に名を知られた、The Guardian紙の米国人記者グレン・グリーンウォルド氏が関係している。10月に彼がガーディアンを離れて新しいベンチャーに参加すると報じられた際に、彼は「どんなジャーナリストでもノーとは言えないだろう」とコメントしていた (BuzzFeed, 10/15/2013)。

オミディア氏が、現代においてジャーナリズムとビジネスが両立する可能性を(少なくとも)低く見ていることは確かだ。ジャーナリズムが(イエロー・ジャーナリズムを例外として)儲かる商売であった例はない。しかし、かつて米国の新聞は「三行広告」という編集の独立性を侵さない理想的な収益源を得て以来、それを拠りどころにして新聞は高級なメディアビジネスとしても発展できた。イエローのほうはインターネットにも親和性が高いが、ハイエンドはそうはいかない。

この基盤がインターネットで崩壊して以降、有料記事とオンライン広告という、位相の違う課題と取り組んでいることは周知のとおり。オミディア氏のテクノロジー・ベンチャーの成功確率は30%あまりだろう。支持者が多くなるので、もう少し高いかもしれない。しかしポアンカレ予想の証明より難しそうなビジネスモデルよりは難しくないだろう。そして潤沢な資金は、FLMの成功確率を高めてくれる。2014年は面白くなりそうだ。(鎌田、12/24/2013)

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