新聞を中心としたニュース企業の世界的団体である国際ニュースメディア協会(INMA)は12月11日、今年で13回目となる年次レポート、News Media Outlook 2014を発行した。アール・ウィルキンソンCEO兼事務局長が執筆したもので、収益源の多様化、成長戦略、ハイブリッド・ニュースブランドなどがフォーカスされている(→要約版PDF)。
ニュース・ビジネスの歴史的転換期の課題を提示
"Navigating the Minefield"(地雷原を行く)という、なかなか魅力的な副題がついているように、ニュースメディア・ビジネスは書籍や雑誌と同様(いやそれ以上)に危険な状態での経営を余儀なくされている。新聞は自前のシステムとネットワークを前提とする設備産業であり、出版ビジネスのあらゆる問題が集約されているからだ。著者は「すべての出版は最終的にデジタルに移行する」という認識を表明し、その転換が痛みを伴うものと述べているが、日本の新聞業界でそう言い切る人はいないだろう。これは新聞・出版・放送の境界も無意味化し、従来は搬送手段で区分されていたメディア・ビジネスが根本的に変化することを意味しているからだ。そこで「ニュースブランド」というアイデンティティが重要となる。彼の提言は以下の4項目。
- 個性的で具体的な移行戦略が求められている
- たんなる「印刷+デジタル」を超えた収益源の多様化
- 重要性を増す戦力:能力と規模、ビッグデータ戦略、企業文化、機敏性のあるスタッフ
- マルチ・プラットフォーム、ハイブリッド・ブランドへの転換
「文化とビジネスモデルの転換は、すべての伝統的メディア企業の戦略の中心課題となっている。しかし、印刷からマルチメディアへの転換は、地雷原の上でダンスを踊るようなものだ。生き延びる者はいるが、死ぬ者もいるだろう。」とウィルキンソンCEOは述べ、3つのテーマを提示する。
- 偉大なジャーナリズムを資金的に支える新しい収益源は何か
- 新たに購読者獲得が可能となる分野は何か
- 「ニュースブランド」となるとはどういうことか
原文を入手していないので要約を頼りにするしかないが、以下10項目の結論を簡単に紹介しておく。
移行には予想されたよりも長い発着場を必要とする。
- すべての出版は最終的にデジタルに移行する。
- メディア企業は新しいニュースブランドを持つべきである。
- 出版者はもっと大きな池で釣をしなければならない。
- ニュース産業は「一時的優位」を迅速な商品開発に結びつける必要がある。
- コンテンツ課金は採用すべきだが、目的に忠実でなければならない。
- いまがビッグデータ戦略に取り組むべき時だ。各社は独自の道を必要とする。
- マルチメディア時代における印刷の価値を見抜く。
- 長期にわたる構造的イノベーションと文化の改革にあって従業員を消耗させないこと。
- グループのデジタル化、多角化の教訓を新しいニュースブランドに生かす。
INMA (International News Media Association) は、80ヵ国以上に6,200社以上の会員を持つ世界的な団体で、ニュースビジネスの発展に必要な、ベストプラクティス(事例紹介)、動向把握、ビジョンとアイデアの共有を目的としている。なお、本レポートは、INMA会員には無料で、非会員には595ドルで提供される。◆(鎌田、12/25/2013)