Kindle FreeTimeが推進する出版のサービス化(♥)

freetime-logoアマゾンは12月9日、Kindle Fire向けの教育系アプリ Kindle FreeTime の機能を更新し、自動配信を開始したと発表した(→リリース)。9月6日の発表会で紹介されたもので、当初は「有害サイトへのアクセス制限」機能などとして扱われた FreeTime の真価が見えてくると思われる。ここでは、背景にあるアマゾンの「インテリジェント・ドキュメント・サービス」戦略にフォーカスして分析してみたい。[全文=会員]

FreeTimeの汎用性

FreeTime1Kindle FreeTimeは、子供がKindle Fireで有害サイトにアクセスしたり、使い過ぎないように両親が管理するための機能 (Parental Control)で、時間の制限を「読書」「アプリ」「動画閲覧」別に設定できる。たとえば‘Learn First’ (勉強が先) という機能は、子供がタブレットで遊ぶより前にその日の課題に取り組むようにさせる。Educational Goals (学習目標) という機能は、毎日決まった時間本を読んだり、外国語学習アプリで勉強させたりできる。アマゾンは FreeTime Unlimited という定額制サービスの数千点もの教育的図書やアプリのライブラリ、あるいはKindleの人気図書1万点から選んで使うことを提案している。厳格な両親のためにTime Limits で夜の使用を制限することも忘れていない。

freetime-fd-tcg1._V399388521_-730x231しかし、アマゾンの戦略という観点からみたKindle Fireの重要な点は、それが驚くべき汎用性・柔軟性を持ったサービス・プラットフォームの一つのインタフェースであるという点だ。ユーザーとアクセス対象、UI/UX、時間、使い方、予算等を含めた使い方を管理するこの機能は、ソフトウェア(+知識ベース)によってかなり高度な設定が可能で、例えば子供の関心対象を知り、さらに別の対象にガイドしたり、といった読書指導のほか、コンテンツの性格によって様々な適応学習の要素を加えることができる。

ユーザー、管理者との関係、管理者のニーズをプロファイル化し、ドキュメント(コンテンツ)と利用方法をルール化するのが文書管理(ドキュメント・サービス)だが、Kindle Fireとアマゾン・クラウドをプラットフォームとすることで、管理やカスタマイズは容易になる。ドキュメントを通したコミュニケーションは普遍的なものなので、保護者と児童のほかにも、教師と生徒、企業と従業員といった関係においても利用できることは言うまでもない。Kindle FreeTimeは教育用であるとともに、企業/研修用、業務文書用のシステムにも変貌できる、最新のOS3が企業LANへのアクセス機能を持ったことは、そのための要件であった。

インテリジェント・ドキュメントの進化形:市場は無限!?

電子ドキュメント技術をかじったことのある方はご承知だろうが、これは人工知能応用のインテリジェント・ドキュメント技術への入口だ。筆者は20年ほど前、米国 Interleaf社の Active Documentなどでこの技術に接したのが最初で、当時は高価なワークステーションと、容易ではないLISPプログラミングを必要とした。ドキュメント管理はユーザーごとにニーズが異なるので、普及範囲はかなり限定されていた。FreeTime(おそらく別の用途には別のサービス名が使われるだろう)は、サーバ(クラウド)ですべてをコントロールし、端末やフォーマットへの依存を極端に減らした、インテリジェント・ドキュメントの進化形と言うことができる。

document220年前にも考えられたことだが、こうした文書技術の適用範囲は、マニュアルを始めとして、教育や金融、医療、研究開発、サービス/メンテナンス、一般業務など、知恵の及ぶ限り、ほとんど無限と言ってもいい。これは商業出版から法人出版など出版物(文書)を介したあらゆるコミュニケーションを、インターネット・ベース、サービス指向に再構築するためのプラットフォームなのである。つまりゼロックスやIBM、EDSから、リコー、キヤノン、あるいは帳票印刷に至る、企業文書システム/サービスを射程に収めたということだ。

出版系の多い本誌読者には縁遠い話かもしれないが、そう遠くもない。というのはコンテンツをめぐる「サービス化」は、ユーザーが個人として特定され、プロファイル化され、サービスが最適化された時点から開始されたものであり、出版社であれ、ストアであれ、あるいは各種のライブラリ提供者であれ、ユーザーのコンテクストに即してコンテンツとその提供形態をコントロールすることは必須となるだろう。(鎌田、12/12/2013)

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