急拡大するRTBとコンテンツ広告の潜在価値(♥)

bidding2010年頃に米国で登場した、オンライン広告におけるRTB (Real-Time Bidding=リアルタイム入札)の市場は2013年で30億ドルあまりに達したと推定され、さらに急成長が予測されているが、eMarketer は予想を超えた成長を反映させて最新の成長予測を改訂し、2017年に90億ドルとした。とくにディスプレイ広告においてRTBのシェアは30%近くになると同社は予測している(Mediapost, 11/26)。[全文=会員]

プログラマティック・マーケティングが変える広告

emarketer-rtb-b-largeオンライン関連市場の予測は直近の実績推定に基づいて改訂されるのが一般的になっており、eMarketerも四半期で改訂している。8月の予測値は、2013年を33.4億ドル。2017年を86.9億ドルとしていた。広告料金に敏感な広告主の間にRTBの採用が広がっているのに加えて、ディスプレイ広告そのものが伸びていることを反映したものという。当面はWeb広告が中心だが、しだいに雑誌や書籍を含むモバイルコンテンツ全般に拡大していくと思われる。

ITとマーケティングが融合したオンライン広告の世界では新語が次々と登場しており、RTBもそのひとつ。RTBの背景にあるのは、なんらかの事象(event)によって予めソフトウェア+アルゴリズムで設定されたルールに従って自動的にマーケティング・キャンペーンを起動する、Programmatic Markewting (PM)というコンセプトで、起動する条件は、ライバルの価格変更、発注/在庫量など、明示的に定義できるものであればなんでもよいし、起動するキャンペーンも、推奨商品や価格に関するものが多い。ある掲載面のPVに対して、最も高く入札した購入者の広告を配信するRTBでのプログラム売買などは、最もわかりやすい応用例と言えるだろう。仕組みとしては、

  • 入札希望者(広告主)は対象属性、広告掲載基準、掲載面、クリエイティブや入札価格などをあらかじめ設定しておき、インプレッション単位で応札。
  • ページビュー(PV)が発生入札開始高値で落札広告配信(この間はミリ秒単位の処理)

real-time-bidding_630_421というものだが、広告販売者にとっては複数の広告主への広告枠の販売が容易になり、広告主にとっては広告の投資対効果が高まるメリットが想定された。とはいえ、プログラム売買に慣れていない広告主や販売者がこの種のプロセスに違和感を持たず、また短期間に習熟できないと成り立たないので、登場した時は未知数だった。ハードルはかなり高いのではともみられたが、さすがマーケット・リテラシーが高いアメリカ企業の反応は早く、短期間に成長市場になったことに驚かされる。Forbes誌は「大成功」というケロッグ社のケースを紹介しているが、売買どちら側にも好評なようだ(03/20)。

RTBはさらにオンライン広告のイノベーションを促している。RTBの提供企業である RadiumOne は、SNSでのコミュニケーションにおけるブランド名の出現などに注目しており、Twitterのハッシュタグを使った“hashtag targeting technology”などを使って広告の効果を高めている。(右の図はPeriscopix社による)

デジタル時代はあらゆるコンテンツが潜在的に媒体価値を持つ

Web/コマースの世界のマーケティングは、コンテンツ・ビジネスの世界にも導入されるのは必然とも言える。広告は「いま」を売るもので、放送が印刷媒体に対して持ってきた優位はその点だ。いま、消費者がどんな情報に接しているかが広告主にとっての価値を生むわけで、印刷媒体は発行日を中心にした一定期間に間接的な形でしかつながらない。しかしデジタルの前に、放送も出版も平等になった。種類に関係なく「いま」そのコンテンツにアクセスしたユーザーとつながることができ、しかも時価で売買されるのだ。出版社はじつは巨大な利益機会を前にしている。

target2「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが、商売における何らかの傾向や法則性を発見し、利用することはビジネスの基本である。Webはオンライン世界でのユーザーの行動をリアルタイムで補足する方法を与えただけでなく、それに対して先取り的に対応する手段も与えている。出版社はマーケッターとして、媒体としてこのテクノロジーを使わないわけにはいかないだろう。在来の方法に比べて数倍の効果が期待されるからだ。アマゾンのマーケティングが高い確率で当たるのは、オンライン世界でのゲームのルールを知っているからだ。

広告料金は、出版物が持つ媒体価値をページ単位で表示する広告料金表をもとに(実際にはその他の要素を加味した「時価」で)売買するものという常識で育った世代には、Web時代のPVでさえ理解が簡単ではないが、そこからリアルタイムでの売買市場が生まれるのは必然とも言える。それによって媒体の広告価値が最大化されることは明らかであり、金融トレーディングで完成されたRTBのテクノロジーを使えば技術的には容易だからだ。いまさらながら、21世紀という時代のビジネスの変化に驚かされる。(鎌田、12/05/2013)

参考記事

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