出版のサービス化

digi_mktgアマゾンが主導した商業出版のサービス化、つまりデジタル・マーケティングを通じた顧客指向は、出版界全体を覆いつつある。米国の出版社がメタデータに取組んでいるのにも驚くし、日本のKADOKAWAがサービス主体としての姿勢を鮮明にしたのも画期的だ。これは重要なステップで、最も顧客志向が必要とされる分野、つまり雑誌、教育出版、企業出版等々、あらゆる出版に広がることにつながる。

21世紀のサービスには仕掛けが必要

serviceしかし、サービス化は簡単ではない。いや、サービスほど複雑なものはないと言ってもいい。形がない無形財で、評価の基準が一定しない、価格も同じ。「親切」か「おせっかい」かは、文化、習慣や状況(コンテクスト)に依存する。日本人は「モーニングサービス」で朝の時間帯のトーストなどと連想するが、英語では朝の礼拝である。だからサービスについて知ることは、サービス対象に関するコンテクスト(5W1H)の意味を知ることなのだ。逆に言えば、それが分かれば大きな価値の源泉になる。成功事例(ベスト・プラクティス)が存在する以上、コンテクストを解明するデジタル・マーケティングは21世紀のビジネスの最大のチャレンジとして避けて通れない。

コンテクストについて分かることは、もちろんほんの一部でしかない。それも「ビッグデータ」の中に拡散しているから、なんらかの基準でデータを拾い集め、仮説として論理化し、実際に(検証可能な形で)使ってみなければ役には立たない。結果をフィードバックするプロセスとシステムも必要になる。勘ではなく、エンジニアリングの世界だ。だからこそ、そうした体制を持っている企業は少ない。アマゾンやGoogleが、ほとんど宇宙人のように見えるのはそのためだ。「コンテンツは王様。でも裸の王様」ということが実感として受け止められてきたろうか。

  • サービスを効果的にコントロールするには、ざっと以下のような体制が必要だ。
  • 体制の整備:判断、プロセス、手順の明確化
  • プロセスの整備:迅速な決定を可能とする解析、可視化、評価基準等
  • ツールの整備:アナリティクス、セキュリティ等
  • 人材の育成:データサイエンスなどリテラシーの向上
  • サービス指向商品の開発(マス・カスタマイゼーション

つまり、ビジネスコミュニケーションの全体がサービス指向になっていないと、部分的に解析ツールや専用のモバイルアプリをつくっても持ち腐れに終わるということだ。

media_marketing出版社にとっては大きなチャレンジだ。これまで「よい and/or 売れるもの」をつくることを考えて(念じて)仕事をしてきた出版関係者に、第三者の視点で売れるようにするロジックを発見するのは困難だ。だから欧米の大出版社は、異業種からデータマーケティングの専門家やデータ・サイエンティストを採用している。理数系と文科系で分断されている日本では、人材を探すのも難しいだろう。したがって、以下の3つのアプローチのいずれかになる。

  1. 外部サービスの利用(一括おまかせコースからカスタムコースまで)
  2. 利用可能なツール、サービスを組合せつつ、手づくりする
  3. 何もしない(ストアや大出版社などプラットフォームに任せる)

よいニュースは、人間に依存しないネット上のサービスは、価格が低下していること、そしてアマゾンやGoogleではない、特定のジャンル、ユーザーを対象とした出版においては、大掛かりなものは必要ないことだ。じっさい、デジタル・マーケティングやそのためのツールはかなり普及した。メディア企業がキャッチアップすることはかつてほど難しくない。(鎌田、12/14/2013)

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