米国E-Book価格戦線異状有り

price2米国市場でのE-Bookベストセラーの平均価格が、再び下落を開始したことでインディーズ系作家のタイトルが割を食って苦闘している。目を疑うような有名作家新刊の激安の背景には、アマゾンではなく、大手出版社間の価格/マーケティング競争が激化してきたことがある。秋冬のブック・シーズンの風景は、今年もまた姿を変えようとしている。恐竜たちによる自由競争と淘汰が始まった。

ebook-best-seller-pricing-aug-2012-to-nov-2013激安の“犯人”は、アマゾンでなく大手出版社!?

昨年末に大手出版社がエージェンシー価格を離脱して自由市場に移行したことで急降下したことは以前にご紹介したとおりだが、今年に入ってから夏まではほぼ7ドル台を維持していた。価格談合事件の和解決着が出た直後になぜかリバウンドしたが、新刊市場が閑散とした8月に低下し、大型タイトルが並ぶ秋の読書シーズンには、トップ25点中13点が10ドル以上をつけていた。しかしこれも一時的だったようだ。9月末に状況が一変する。大手出版社が最も力を入れるベストセラー作家のジャネット・エヴァノビッチ、ルイーズ・ペリー、マイケル・コネリー、パトリシア・コーンウェルを含む新刊が3ドルあまりで売られたのだ。

先鞭をつけたのがアマゾンだったので、この会社が激安価格を演出したと誰しも想像したのは無理もないが、7ドル台ならともかく、3ドルというのはアマゾンが操作できる“法廷許容”マージンを超えている。大幅値下げは出版社の元値が下がらなければあり得ない。The Digital Readerのネイト・ホフェルダー氏は、大手出版社が秋冬のイベントに臨む姿勢を変えた可能性を指摘している(12/10)。つまり、昨年までは大物作家の発行日や価格を調整するために、大手出版社間で非公式談合を行い、例えばスティーブン・キングとジョン・グリシャムの発行週を分ける紳士協定を守っていた。競争が激化したことで、安定した秩序が崩れ始めた可能性がある。

かつて印刷本への影響を恐れて価格下落に抵抗し、談合までして固定価格制を導入した大手出版社だったが、その後の展開は大方の予想を外れた。(1)印刷本とE-Bookとの関係は無視しうること、(2)低価格のインディーズ本の進出が脅威になっていること、(3)E-Bookの利益率は高く、出版社が追求すべきは印刷本の防衛ではなく、デジタルの最大化である、という認識が広がったのだ。価格訴訟の結果、出版社が学んだことは、結局「アマゾンの言った通り」だった。彼らは絶対に認めようとしないだろうが、市場=消費者が買いやすい価格が「正しい」価格なのだ。

大物作家作品の発売日をめぐる、出版人たちの優雅な駆け引きの時代は、もしかすると永久に終わったのかも知れない。ライバルへの配慮は減り、競争は激化し、容赦のない殺伐としたものとなった。そうすると、価格を武器とすることができない自主出版はとりあえず弾き飛ばされる。ベストセラーリスト入りはかなり苦しくなるだろう。2013年の市場は、また姿を変えていこうとしている。(鎌田、12/12/2013)

参考記事

Scroll Up