アドビは1月22日、E-Book環境ソフト Adobe Digital Editions 3.0をリリースした。CSSサポートの拡張、縦組など多言語環境への対応のほか、EPUB向けDRMのセキュリティ対策が強化されている。ストア向けのサーバ・ソフトウェア Adobe Content Server 5 も更新されて、新しいDRMに対応する。しかし、予想された問題が持ち上がった。コンテンツとリーダの互換性である。
アドビの今回の発表ではDRMの更新が強調されているが、それは言うまでもなく昨年秋の大規模なハッキングと顧客情報流出(3,800万以上のアカウント)を受けたものだ。暗号化方式がかなり幼稚なものだったことも判明し、早急な対策に迫られていた。新しい「DRMスキーム」は複数のレイヤーを設けて暗号化方式を動的に変更するというもの。しかし、この変更の結果、標準EPUB仕様を独自に拡張することになり、旧DRM対応コンテンツとの互換性問題が生じている。ADE3対応コンテンツは、旧ADEデバイス/リーダでは読めない可能性が高い。アドビDRMはKoboやソニーが使っており、国内ユーザーへの影響もありそうだ。
The eBook Readerは、セキュリティの強化によって、EPUBのオープン性が損なわれ、ユーザーをアマゾンに向かわせることを心配している(01/22)。他方、The Digital Readerのネイト・ホフェルダー氏は、現実的に言って、旧EPUB DRMが市場に多数存在しているうちは、出版社も新版への意向を遅らせると考えている(01/27)。つまり、新DRMも、したがって新ADEも採用されないということだ。ITシステムにおいて、鍵を取替えるということは、時にドアを別に取る付けることを意味する。アドビはその問題の解決を用意しているだろうか。
今週初めからトラブルの苦情がTwitterなどに溢れている。全部ではないが、相当数のコンテンツが新しいADEで読めなかったり、新しいコンテンツを旧いリーダで読めないといったものだ。これがDRMに固有の問題なのか、ADE3のバグなのかはまだ明らかではない。はっきりしていることは、新しい技術を入れたツールは、すぐに更新したりせず、少なくとも次の修正版まで待ったほうが賢明だということだ。筆者の友人は、就航したばかりの最新鋭機(例えばB787))には18ヵ月間乗らないことを決まりにしている。航空業界の常識で、大小無数のトラブルが集中するためだ。◆(鎌田、01/30/2014)