女性のための女性のデジ出版社誕生

shebooks2相次ぐベストセラーによって最大の市場セグメントである「女性」が改めて見直されている米国ニューヨークで1月2日、「女性作家、女性編集者による女性読者のための」eシングル専門の出版社、Shebooks がスタート。新刊9点をリリースした。タイトルの増加に対応するため、購読モデルも組込んでいるのが特徴。当面はKindleおよびNookで提供されるという(→リリース)。

「17億ドルの米国E-Book市場の71%が女性」

すべてオリジナルの新刊9点の内訳は、回想が6点と小説が3点。著者の顔ぶれは、Hope Edelman、Marion Winik、Faith Adiele、Jessica Anja Blau、Suzanne Paolaの各氏で、いずれも名の通った著述家。同社では毎月最大で15点の発行を予定しているが、長めの雑誌小説から、通常の書籍程度の長さになるもよう。年内には100点を超えることになるが、3月からは購読モデルを立ち上げる。

Laura FraserShebooksの共同創業者のローラ・フレーザー編集長(写真)は、「女性著述家は、最も個人的な作品を発表する、新しい場を求め、女性読者は多忙な日常にぴったりな、よい読み物を切望していました。私たちは初めてお届けするタイトルのバラエティと質に、大きな期待と自信を持っています。」と語っている。たしかに忙しい女性読者にフィットするタイトルはこれまで少なかったように思われる。読者は「専業主婦」ばかりではなく、むしろ「潜在市場」は家にいないという発想は、男性編集者にはないものだろう。

peggy-northrop300Shebooksは昨年、ジャーナリストで著述家のフレーザー編集長とベテランの雑誌編集者、ペギー・ノースロップ氏(写真下=Reader’s Digest、Moreなど)、女性出版人のレイチェル・グリーンフィールド氏(Martha Stewart Living Omnimedia)によって共同で設立された。女性起業家のための基金の支援も受けている。グリーンフィールド氏は「女性は17億ドルのE-Book市場の71%、すべての雑誌購読者の3分の2以上を占めています。しかし、現実には女性の上質な著作のための場はそれに見合っていません。デジタルというフォーマットが女性の多忙な日常に理想的なものであるにもかかわらずです。私たちはタブレットが登場した時に思いついたのですが、いまは飛躍と成長に十分な機が熟したと考えています。」と述べている。雑誌ビジネスのベテランもいるので、マーケティングにも独自の感覚を発揮することが期待される。

shebooks1男性優位が著しい日本の出版界と比べれば、米国の出版界は女性の職場という印象すら受けてしまうのだが、そう考えるのは筆者の偏見に過ぎないようで、少なくとも大出版社に限れば、当事者(多数を占める女性編集者)たちはそう考えていない。数の問題ではなく、経営幹部にまだ男性が多く、何より出版の方針が女性読者を重視していないというのである。そうした不満は、E-Bookによって、また自主出版の拡大によって実証されることになった。デジタル読書は、ガジェット好きな男性ではなく、忙しい女性から普及しているし、まだ限界を見せていない。おそらくShebooksなどが成功すれば大出版社も女性ブランドを強化するだろう。デジタル時代の出版は名実ともに女性中心になる可能性も高い。

そう考えると、日本の出版界はデジタルだけでなく女性という最も重要な市場機会を失っていることにもなる。やはり女性出版人に期待するしかないのだろうか。(鎌田、01/09/2014)

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