アマゾンがリアル店舗に関心を持ち、実験を重ねてきたことはよく知られている。スーパーやコンビニがオンラインの重要性を知る以前から、アマゾンは店舗の重要性を知っていた。そのアマゾンが今年こそ店舗展開を始めるとDBWが予想した。それではどんな形態をとるのだろう。そしてオンライン時代の店舗の意味とは何だろう。
2. アマゾンの実店舗進出
エンゲージメント戦略の新段階:バーチャルからリアルへ
日本でも最近、期間限定でショールームやポップアップ・ストア(臨時店舗)を試したりしたが、そうしたことは、Staplesや RadioShack などの量販店の店舗を利用した「ロッカー」の開設を含んでこの数年、徐々に拡大している。前述のストーン氏によれば、ベゾスCEOはもともと実店舗に積極的なのたが、ROIが確実でなかったので踏み切れないでいるとのこと。実店舗が販売するのは、基本的にKindleデバイスやアクセサリで、これにオンラインで注文した品物をピックアップできる「ロッカールーム」を設置しそうだ。そしてWebストアのベストセラー商品の展示も考えられる。
Kindle Fireシリーズを中心としたデバイスは、3代目でクラウド・サポート機能が拡大するにつれて、ていねいな説明を必要とする商品になりつつある。たんなる「ショールーム」でも追いつかないわけで、カスタマー・サポートの「メイデイ」機能を導入したのもそのためだ。少なくともアマゾンはオンラインストアの限界を熟知している。これまでアマゾンには「税金逃れ」「安売り」というレッテルが貼られてきたが、州レベルでの課税強化が拡大してきた現在、“アマゾン式小売店舗”の開発・展開によって、“ハンデ”なしでも十分に勝てることを示すだろう。
Kindleデモルーム+目玉商品即売+ロッカー
本誌が推測するのは、Kindleデモルーム+目玉商品即売+ロッカーの組合せを基本アーキテクチャとして、常設店舗は抑えてハイシーズンのポップアップ・ストアなど、地域特性に合わせた形態をとるというものだ。タイムセールなど、イベント性の強い販促を店舗にも持ってきて話題性を持ち上げられる。なにしろ、通常の店舗では考えられないほどの顧客情報をアマゾン店舗は利用できるのだ。「アマゾンのショールーム」とされた時代が懐かしく思えるほどのダメージを大規模店舗に与えるかもしれない。アマゾンは小規模小売店に「アフィリエイト」の呼びかけをするだろう。これだとショールームでお金が入る。
米国のデジタル・マーケティングで最近強調されるようになってきたのは、「エンゲージメント」ということだ。オンラインで「客あしらい」を効率よくやることの限界が認識され、少しでもサイトの滞留時間を延ばしたり、電話を切らずに親近感を持ってもらうなど、ひと昔前とは逆のことが言われているのだが、日本ではまだ追いつけているところは少ない。アマゾンはエンゲージメント・カンパニーを標榜しているが、実店舗の展開がオンライン+オフラインを併用したエンゲージメントの最大化にあることは注目していただきたい。日本でも同じことをやってくるはずだ。もし新しい「ショップ体験」がデザインできたら、新製品発表時以外はあまり話題にならなくなったアップルストアに代わり、コンスタントに人を集めるかも知れない。 =つづく(鎌田、01/02/2014)
参考記事
- The Amazon Store: What Will It Look Like?, By Jim Tompkins, CEO, Tompkins International