2014年10大予想 (8):出版社もデータ駆動(♥)

data_driven2かつて書店を顧客としていた米国の出版社は、B2Cビジネスとしての道を選択した。インターネット/サービスから供給される豊富なデータ、解析を支援するツールやサービス、統計やIT、マーケティングに強い外部人材の獲得により、この数年で成長ビジネスとして変貌しつつある。その中心はデータ駆動経営だが、その背景には組織論的な変化がある。日本でもキャッチアップが必要。[全文=会員]

8. 出版社はデータ駆動型の意思決定に移行する

出版関係者にとっては周知のように、データの重要性についての認識は、この業界にはつい最近までなかった。マーケティング、企画制作、版権管理から企業買収まで、大小の経営上の問題は年季を経た専門家、経営者の勘に頼るのが通例で、データをもとに判断すれば済むような単純なことではなく、また入手可能なデータが、内容的にも時間的にも経営上の判断に使えるものではなかったからだ。出版物の半分あまりがオンラインで取引される現在では状況は一変したことは言うまでもない。

data_driven米国出版界はこのデータ革命にかなりよくフォローしている。インターネット環境とそこで利用できる多様なサービスは、パイプラインのように連続的で、膨大なデータを伴い、それらから日々の判断を下す必要が出てきたからだ。これまでの出版界の人材では対応できないので、大手出版社は新たにデータサイエンスの専門家やデジタル・マーケティングのプロを、アマゾンを含むネットビジネスやウォール街まで手を広げてリクルートしている。それと同時に、ダッシュボードを使ってデータの解析を支援するサービスも登場している。DBWは、App Annieと Iobyte Solutions の2社を例として挙げている。こうしたサービスは、販売データ、本の読まれ方、読者の特徴その他のマーケティング・データを日常的に出版社に提供している。

DBWは、自らデータ駆動型意思決定を実践しているというSourcebooks のラッカーCEOの「データは本の世界の主流になっていき、書籍出版プロセスのあらゆる側面に影響を及ぼしていくでしょう」というコメントを紹介している。彼女はこれが出版社に止まらず「出版のサプライチェーンのすべての部分で、データの読みが変化を促す」と述べている。

「意思決定」も「データ駆動」も今日の経営の中心テーマであり、家電や半導体を代表として、日本の大企業システムが決定的に後れをとったものだ。筆者は「経営とIT」というサイドからこの問題に関わってきたので言いたいことは多い。データ駆動の基本は市場(顧客、消費者)から学び、迅速に応えるということなのだが、これは現場での意思決定の比重が大きくなることを意味する。トップと現場の距離を縮めて組織をフラットにすることは、アップルでもアマゾンでもサムスンでもやっているが、日本でも(ソニーのように)かつては出来ていた。とりわけメディアの世界において「意思決定」とは、価格決定や出版企画のような日常的なオペレーションで必要なものであり、経営計画や役員室といった制度化されたものではない。

日本病に冒され、抜け出せない大企業と比べれば、出版は大手でさえ規模は小さいので、既存の流通をご神体として墨守する姿勢を改めれば、あるいはそれとは無縁な人々によって、データ駆動やチーム・マネジメントという21世紀のパラダイムを受け容れることは難しくない。これまで出版において大手は、市場からの情報などよりは、書評や書店のスペースにおける優越を競争力としていた。インターネットでは市場の声を聞くことが出来る者が主導する。それによって出版社や書店も体質を変えていければ、出版は再び成長軌道に乗るだろう。(鎌田、001/23/2014)

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