米国で行われた子供のデジタル読書調査の結果が1月13日、NYで開催されたDigital Book World Conferenceにおいて発表され、2-13歳の児童の約3分の2 (67%)がE-Bookに接していることが明らかにされた。昨年の54%から大幅な上昇は、デバイス、コンテンツの普及とともに、学校での導入拡大によって子供のデジタル読書に対する保護者の姿勢が大きく変化したことを示すものと考えられている。
学校では教科書ではなく読書教育を先行
"The Kids + E-Reading Trends 2012 to 2013"という調査は、ファミリーにフォーカスしたグローバルな調査会社 PlayCollective が、昨年10月、2-13歳の子供を持つ両親、900名を対象にオンラインで実施された。レポートによると、E-Bookを読む児童の92%が、毎週1回以上読んでいるほか、半数近くが毎日読んでいる。また、両親は今年、E-Bookやアプリの購入を増やす意向を持っているという。PlayCollectiveの調査は2012年実施の第1回に続くもので、子供のデジタル読書市場の成長を示している。調査レポートの全文(PDF)は295ドルで販売されている。
米国で「子供E-Book市場」が明確に意識され始めたのは、2012年くらいからで、学校での導入の環境が出来てきたことに対応している。娯楽より教育が最優先され、様々な影響評価や投資効果などにも厳密なので、当初は紙の本との優劣が問題にされた。両親は「読み聞かせ」のやりにくさや「物理的な存在感」の欠如に否定的な声が伝えられもした。しかし、教師や両親が違和感を持たなくなったので、教育界でも読書教育に導入を始めた。米国の読書教育のインフラは非常に整備されており、学齢ごとに推奨図書がかなり幅広く指定されている。学校での貸出管理システムやソーシャル・リーディング、そして適応学習の指導環境が使われることで、教育上のメリット(とくにコスト効果)が確認されると、導入は非常に速い。
注目すべきなのは、学校における導入がまず読書教育ツールとして導入が始まったこと。つまり「電子教科書」という“使う本”を後回しにしたことだ。それにより教育現場にも抵抗が少なく、スムーズに普及が進んだと思われる。学校・学区単位で、民間サービスがサポートする形で市場が形成されたことも成功の要因だろう。スケールが大きくなるほど問題が政治化、利権化するからだ。各州レベルでは、英語・数学についての Common Core (CCSS)の採用が進んでおり、関連の読書を促進している。これらが相俟って、米国では“教育出版ブーム”が起きているのだ。これはまた別に取上げたい。◆(鎌田、01/16/2014)