SNSサービスの LinkedInは2月19日、長文出版物の公開のためのプラットフォームをすべての会員に無償で提供することを発表した。これまで特定の LinkedIn Influencers しか認められていなかったが、これは一般公開のためのテストであったようだ。「あらゆるプラットフォームはメディア化する」というインターネット時代のビジネス原理は、また新種を生み出す。
ビジネス系コミュニケーションで特に有効
これまでリチャード・ブランソンのようなセレブが行っていたLinkedInでの出版は、同社によれば平均して31,000 PV、80コメントあまりのレスポンスを得ている。LinkedIn Influencers も徐々に増えており、現在500人あまり。月間アクティブ・ユーザー数2億7,700万という本体が出版プラットフォームに開放すれば、利用が急増し、広告と結びつくコンテクスト・データの増加が見込める。だから、膨大なビジネス・ユーザーを擁するLinkedInでの自主出版は十分に合理的な一歩だ。SlideShareなどのビジネス系ソーシャル出版サービスは、すでにLinkedInとの乗り入れをしているので、ユーザーにとって必ず必要な機能ではないが、例えば手持ちの論文、ブログ記事、プレゼン資料などの出版が身近になる。SNS上の知り合いに更新を自動通知するのも便利だ。
そして、この出版/読書環境を商業出版、とくにビジネス/ニュース系出版に拡張することは容易だし、合理的だろう。GigaOmのマシュー・イングラム氏は、例えばいま4億ドルあまりで売りに出ているForbesあたりを買収することは現実性があると考えている。老舗の経営誌は年間売上が1億3,500万ドルほど。年商15億ドル、キャッシュが20億ドルのLinkedInの買い物としては手頃だ。経営・経済誌のコンテンツはビジネスSNSのユーザーが現に必要とし、消費しているものだ。またLinkedInのプラットフォームを利用することで、メディアはペイウォールのような難しい(極端に相手を選ぶ)ビジネスモデルを回避することもできるし、有効に使うこともできるからだ。
これまで、マーケティングにおける「ソーシャル」の可能性については、もっぱら商業出版サイドから考えられてきた(例えばFacebook、Twitterの利用や読者コミュニティなど)。これらはフィクションや職業作家には有効だが敷居は必ずしも低くない。B2B出版を考えた場合は一般向けのSNSプラットフォームよりもLinkedInのような、プロフェッショナル向けのほうが有効性は高いだろう。SNSが商業メディアを買収する時代はそこまで来ている。◆(鎌田、02/20/2014)