E-Book出版プラットフォームのVook は2月24日、データ解析を行うスタートアップ企業、Booklr(これもニューヨーク)を買収したと発表した。同社は出版社やニュースメディアに対し、市場インテリジェンス情報を提供していくとしている。買収に伴い、Booklrの共同設立者ジョシュ・ブロディ氏がVookのCOOに就任するほか、20名ほどの従業員もすべて移籍する。買収金額その他は公開されていない。
データ解析がデジタル出版ソリューションの中心に浮上
Booklr(ブックラー)はリアルタイムデータ解析プラットフォームを持ち、著者および出版社に対し、マーケティング上の判断に役立つインテリジェンスを提供し、現在約400万点のタイトルをすべての主要小売チャネルにわたって記録している。Vookの創業者、ブラッド・インマンCEOは、「書籍に関するデータを集約し、活用可能にするサービスにおいてBooklrが果たしてきた主導的役割が、Vookの総合的出版ソリューションと合体することで、著者と出版社に強力なマーケット・インテリジェンスを提供していきます」と述べている。発表によれば、Vookはこの合併により新しいインテリジェンス商品を提供していくという。
Vookは数ある著者/出版社のためのE-Book出版サービス・プラットフォームの一つだが、もともとはその名 (Video+Book)の通り、拡張型E-Bookを志向していたので、テクノロジー志向は強い。しかし、市場が拡大して競争が激化するこの分野で、現在最も必要とされるのは、制作(フォーマッティング)よりも情報力となっている。しかし、出版マーケティングに通じたデータサイエンス系の人材(あるいはその逆)は少ないので、専門サービス企業(ほとんどがスタートアップ)の買収が有力な選択肢となる。そちらのほうでも、事業の拡大にはマーケティング、コンサルティング系の人材と設備(=資金調達)が必要になるので、より資金力のあるところに会社を売ってキャッシュアウトすることを考えている。
今回の発表でやや意外だったのは、大手出版グループやメディア企業ではなく、Vookだったことだ。もともとは拡張E-Book系の出版社として出発したのだが、その後も柔軟に業態とサービスを変化させて市場に適応している。ベンチャー資金で設立した会社だが、資金的には余裕があるようだ。Vookの場合のライバルは、配信プラットフォームにフォーカスしたSmashwords、著者出版者支援の Author Solutions、FastPencil、出版の傍らテクノロジー・サービスも提供する Atavistなどがあるが、もちろんKindleプラットフォームに関する限り、アマゾンも情報では定評があり、中途半端なものなら通用しない。ランダムハウスなどの大手出版社を顧客に持つBooklrは、20名のスタッフがいたということなので、アナリティクス・サービスはかなり強化されるだろう。◆(鎌田、02/27/2014)