出版界の地殻変動を示す5枚のチャート (1)

bookstore_experience米国ではKindle以後6年を経て、変化のトレンドを再評価しようという空気が強まっている。学者でジャーナリストのジェーン・フリードマン氏が、共有すべき5枚のチャートをブログPinterestで公開し、注目されているので紹介しておきたい。市場データは山のように目にするが、発見を伴うものは少なく、見落としも多くなる。キュレーターによるセレクションとポイントを押さえた解説は貴重だ。

デジタル出版のような非連続的変化において、丸5年というのは重要な節目で、ビジネスから離れた歴史的なスケールで見直すことを可能にする。つまり、大衆消費型出版の半世紀やグーテンベルク以降の500年と比較して、この地殻変動で何が変わり、何が変わらないのかを評価できる時点にさしかかったということだ。学者、研究者の出番だ。

フリードマン氏がセレクトしたのは、以下の5点のチャートで、講演活動でよく使っているもの。

  1. 書籍小売チャネル別シェア(2010年10月~2012年11月、Bowker Books & Consumers)
  2. 印刷本市場の長期変化(2004年~2013年)。Nielsen Bookscan
  3. 米国人(18+)のガジェット保有率の推移(2006~2013年)、Pew Internet Surveys
  4. 大手出版社の利益率向上(HarperCollinsの発表資料)
  5. 出版分野別にみたメタデータの完備と販売の関係、2012年1月、Nielsen社ホワイトペーパー

変化その1:“弱肉強食”ではなかった 小売チャネル

とりあえず1から(出典)。これは紙とE-Bookを合わせたデータで、2012年末にWeb(大部分アマゾン)が43.8%と半分に迫ったことを示すものだ。本誌でも紹介した。フリードマン氏が注目したのは、誰もが注目するコマースの拡大(25.1→43.8%)よりむしろ、2年間で2割を切った大規模チェーンの独り負けと没落(31.5→18.7%)であり、エコシステムの多様性を示す、その他すべての合計が5.8ポイントの減少(43.3→37.7%)に止まっていることだ。大方の見方とは異なり、アマゾンは小規模書店には影響を及ぼさず、むしろ量販店とも言うべき大規模書店チェーンという存在を窮地に陥れたのである。

f456362869a269e6ded9275d4355a14b

1960年代にベストセラーのディスカウントでシェアを築いたB&Nや、1980年代に市場指向の在庫管理システムでそれに並ぶ存在となったBordersは、いずれもコンピュータを経営管理に導入したことで時代を築いたイノベーターなのだが、インターネットには躊躇した。アマゾンはその間隙を突き、彼らが最も強かったマスマーケットで顧客を奪い、商品そのもののデジタル化をリードした。それに対して、インターネットの影響を受けにくい市場セグメントを相手にしているチャネルはしぶとく生き残っている、ということが言えそうだ。スーパーマーケットが淘汰され、固定客を持っている小規模小売店が生き残るという構図。本誌は、得意客を大事にしてきた小売店が、格段に使いやすくなったインターネット環境を使い、ミクロレベルでの商売の知恵を働かせる時代になったと考えている。

小売価格競争がない日本では、大規模書店チェーンはかなり遅れてやってきた。コンビニとともに小規模書店を駆逐して覇者となったが、シェアは取っても儲からず、多くは慢性的な赤字を抱え、大手取次や印刷など、出版サプライチェーンの伝統的ステークホルダーに救済されて機能を維持している状態だ。市場のダイナミズムやE-Bookという点ではまったく状況は違っても、Webコマースの拡大と大規模チェーンの苦境という点では米国と同様と言える。違うのはデジタルという未来が見えず、エコシステム全体が衰弱している。つづく (鎌田、03/27/2014)

Scroll Up