アマゾン出版は3月12日、ドイツにおけるドイツ語コンテンツの出版を本格化させることを明らかにした。すでに12点の版権を取得し、印刷版とKindle版を同社のサイトを通じて販売する。昨年7月にKindle Singleのブランドを立上げ、11月からは翻訳からオリジナルに広げていたが、通常出版へ拡大することは、グローバル出版社をめざす展開の一環とみられる。
デジタル時代の出版は地上戦より空中戦
今春の刊行予定として、以下を含む4点が発表されている。
- Klang der Gezeiten (The Sound of the Tides) by Emily Bold
- Bis alle Schuld beglichen (Until All Debts Are Cleared) by Alexander Hartung
- New York für Anfängerinnen (New York for Beginners) by Susann Remke
最初のは米国アマゾン出版の翻訳。2番目は警察ミステリ・シリーズの第一作。最後タイトルはニューヨーク在住の雑誌編集者が書いたコメディ小説と紹介されている。
このプロジェクトは、セーラ・トマシェク発行人をトップとするEuropean Amazon Publishingチームがミュンヘンのオフィスで行うという。同氏はアマゾン出版傘下の翻訳出版ブランド AmazonCrossingsの責任者を務めた経験があり、ドイツにおける出版でもオリジナル版の多国語展開を想定していることがうかがえる。アマゾンの発表によれば、ドイツ語作品の英訳出版の成功がドイツ語オリジナル出版プログラムにつながったという。The Hangman’s Daughterは、米国で100万部を超えるベストセラーとなった。ドイツでの出版作品の多くは、AmazonCrossingsを通じて英語版が出版される。
今回の発表ではアマゾンのサイトを通じた出版とされているが、アマゾンは「印刷本はすべての書店に扱ってもらいたい」と述べている。米国では大手書店チェーンのアマゾン・ボイコットに遭っているが、ドイツでは不明だ。
日本を含むことになるであろうアマゾン出版の世界展開の特徴は、ほぼ以下のようにまとめられる。
- デジタル・ファースト
- 英語をハブとした多言語(グローバル)展開
- グローバルなタレント発掘、とくにジャンル・フィクション重視
- ローカルな流通に依存せず、自社サイト優先
- バイリンガル/バイカルチュラルで、マーケティング指向なスタッフ
こうしたことは、伝統的な出版社では考えられないものだ。アマゾンはデジタル時代の出版社とそのオペレーションを再定義している。他のアマゾンの事業と同様に徹底した工学的アプローチなので、時間はかかっても成功するだろう。◆(鎌田、03/13/2014)