ニールセン社は3月19日、2013年の英国での出版活動に関するレポート Books & Consumers を発表した。E-Bookの購入は20%増加し、3億ポンド(約500億円)、8,000万冊、2012年の5冊に1冊から4冊に1冊に増加し、購入額に占めるシェアは14%となった。とりわけ成年向けフィクションでは、3冊に1冊から5冊に2冊と、半数近くを占めるに至っている。
2013年のE-Book市場は20%の成長
以下は要約版に基づいたもの。紙を含めた市場全体の3億2,300万冊、22億ポンド(約3,700億円)という数字は、前年比4%あまりのダウンだが、これは『フィフティ・シェイズ三部作』現象が去った影響で、これを除外すれば、減少はわずかなもので、ボリュームでは1%の増加だという。米国と同様、E-Bookの成長を支えている有力な要因は自主出版だ。ボリュームではE-Bookの20%あまり、金額で12%だが、このシェアはフィクションではさらに高くなる。ニールセンのレポートは、印刷本市場の量的縮小、インターネットを使ったデジタル・オンリー市場の拡大により、自主出版は今後もE-Book市場を牽引していくと予想している。
英国のデジタル化は米国の2年遅れで続いたが、最近ではほぼ並ぶところまできている(左のグラフを参照)。これまでのところ、英国の動向は米国のケースを一般化できるかどうかを判断するバロメータと言える。この両国がデジタルの最前線を示していることは間違いない(日本とフランスはその逆)。このレポートについて、TeleReadのポール・マッキントッシュは、最近出たEnders Analysiの保守的なレポートと比較して、ニールセンがプロ・デジタルに舵を切ったことに注目している。つまり、デジタルはもう限界に近いと見るか、そうではないと見るかの対立において、後者に組したということである。
簡単に言って、印刷本の市場は年々漸減しており、デジタルはまだかなりの高成長を続けている。前者はともかく、後者が続くかどうかということだが、出版業界にとってはさらに細かい点が重要となる。つまり、
- 現在4割を超えるジャンル・フィクションのデジタル比がどこまで進むか
- 相対的に遅れているノン・フィクションのデジタル化が壁を越えて進む可能性はあるか
- 伝統的出版界にとって「心理的抵抗線」である3分の1の壁を越えるか
- デジタル・オンリーに近い自主出版は、明日の出版の姿を示すものか
- <自主出版→ジャンル・フィクション→フィクション→全体>という仮説は成立するか
少なくとも、経済合理性で判断する限り、5番目の仮説は十分に成立すると考えられる。ただ、出版界のメインストリーム(ビッグ・ファイブ)がこれを確認するまでにはあと3年はかかると思うし、自主出版が容易ならざる破壊的イノベーションだということも認めたがらないだろう。それを認めればデジタルメディア革命における主導権を失うことにつながるからだ。しかし、印刷本を「限定/愛蔵版」あるいは使い捨て可の「実用版」として補完的に扱うようになる変化は徐々に進行していく。したがって、自主出版が先鞭をつけたデジタル・オンリー(あるいはデジタル・ファースト)が、新しい現実として受け容れざるを得ない。
デジタルプリントの進化はかなり急速で、20年あまりを経て、ようやくこの技術が当初の期待通りのパフォーマンスを発揮することが実証されてきた。筆者はデジタルプリントの普及が、デジタルファーストへの移行を推進するものと考えている。◆(鎌田、03/25/2014)