米国出版社の団体であるAAPは4月1日、2013年の商業出版統計を発表した。成年向けE-Bookは前年比3.8%増の13億ドルとなり、バブルの2012年に記録した41%増に比べて大きく減速した。青少年、宗教書を含めた数字はほぼ横ばいの15億3,000万ドル。しかし、出版市場全体が1%減の70億1,000万ドルとなったので、成年向け書籍に占めるデジタル比率は23%から27%に上昇している。
「革命は終わった」のか
2013年のE-Book市場が減速に転じたことはかねて推測されており、この数字に意外感はないが、どう読むのかについては見方が分かれる。まずAAPにデータを提供しているのが約1,200社であるが、自主出版が増加した現在の米国市場では必ずしも市場の大部分を反映するとは言えない。AAPの数字はその範囲内でしか比較できず、「減速」したのが既成出版社だけなのか、それともすべてであるのかは、これだけでは判然としない。そして、2012年の大ヒットによる影響を差し引いて考えれば、市場は10%以上の成長を示していると考えることもできる。
いずれにせよ、重要なことは、以下のような点ではないかと思われる。紙中心主義の立場からデジタルの快進撃が終わったことを喜ぶのは短慮に過ぎよう。
- E-Bookの爆発的成長は2012年で(少なくとも一度)終わった。
- AAPの会員企業のデータは必ずしも市場全体の傾向を反映していない。
- 2012年の超ベストセラーの影響をを除けば、市場はなお成長している。
- E-Book市場の規模は商業出版社のデータによる15億ドルより多い。
- これまでの浸透はフィクションが中心で分野によっては50%超となった
- 今後の浸透は、ノンフィクション、実用書、B2Bが中心となる。
- デジタルは出版市場の成長を支える重要な要素である。
英国のテレグラフ紙は4月2日の記事で「革命は終わった」というウォーターストン書店の創業者、ティム・ウォーターストン氏の発言を紹介した(Hannah Furness, 3/31)。彼は「米国市場から得られるあらゆる兆候から見て、シェアはすでに落ち込んでいる」とまで述べている。しかし、成長率は落ちたが、マイナスにはなっていない。英国で1週間ほど前に発表されたニールセン社のデータでも20%の成長が示されていた。アマゾンとKindleによるストレスにさらされ続けてきた立場としては理解できるが、データは恣意的に使うものではない。◆(鎌田、04/03/2014)