アマゾン vs. アシェットの攻防

Hachette_Amazonメーカーと小売は、互いに不可欠な存在でありながら、価格を中心とする取引条件をめぐっては時に緊張関係を呈する。出版業界でも同じことなのだが、一方の当事者が米国書籍流通のシェア3分の1以上を占め、あらゆる関連業態に進出するアマゾンで、水面に浮かんだ現象が、紙のベストセラー本の配達遅延であったりすると話は別のようだ。

焦土戦術(?)のアマゾンに非難の嵐

Bezos_box反アマゾンの旗幟を鮮明にしているNYタイムズ紙のデイヴィッド・ストライフェルド記者が、「アマゾン、アシェット社の数点の本の出荷を遅延」という記事を掲載して波紋が広がった。昨年B&Nとサイモン&シュスター社の間で行われたタフな交渉が「発注部数制限」にまで拡大し、解決に数ヵ月を要したように、この種のことは異例でも何でもないのだが、「安売=横暴」のアマゾンとベストセラーの常連のアシェットの場合はやはり特別のニュース・バリューがあったものと見える。外野も参加してホットな話題となってしまった。

周知のように、紙もデジタルも卸販売制が広く行われている米国では、ベストセラー本は目玉商品として卸価格(一般的に低下の5割)より安く販売されている。小売側は数を売ることによる赤字を減らしたいので値下げを要求し、版元は拒否するという構図だ。これに全体の取引関係(総販売点数と金額)、E-Bookの仕切価格、アマゾンが負担する配送料などの要素が絡んでいるので、値決めは複雑で外部からは窺い知れない。今回も交渉の詳細は表に出てこない。

Amazon_delay表面に出た現象としては、Malcolm Gladwell、Stephen Colbert、J. D. Salingerら人気作家の作品数点(ハードカバー)について、配達期間が「2、3週間」と表示されてしまうことだ。B&NとS&Sのケースでは多くが「品切れ」になってしまったので、影響は今回のほうが小さいはずだ。辛抱できないユーザーは Amazon.comで買うことを断念するだろうが、他のどこでも販売されている印刷本なので影響はない。またマーケット・プレースでならば購入できる。アマゾンは対象となった商品について「他のはいかがですか?」と回避を進めているので、水をかけられた形のアシェットは気になるだろう。また「個客第一」を掲げるアマゾンにも焦土戦術のマイナスは大きいはずで、なるべく早く収拾したいところだろう。

社会的にはとてもニュースなネタとは思えない。しかし「ウクライナ東部国境をにらむプーチン」と形容する業界人もいるくらいで、気にする人は多い。アシェットの契約条件は直接間接に他の出版社にも影響するからだろう。記事はなお続々と書かれているので、次号あたりで論点をまとめてみたいと思う。(鎌田、05/15/2014)

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