Barnes & Noble (B&N)の取締役会は6月24日、2015年第1四半期をめどに書店事業とNookおよび大学書店事業を分離し、2つの上場企業への分社を目ざすことを決定した。5月3日で終わる前年度決算の発表の中で述べられたものだが、ここでの数字は6.7%の減収(63億8,000万ドル)と増益(710万→2億5,100万ドル)であった。しかしNook事業はなお2億1,760万ドルの赤字。
デバイスの出血は減ったが将来は暗い
分割自体はアナリストなどが要求し予想していたものだが、デバイス事業の苦境とコンテンツ販売の不振によってNook Mediaの完全分離は困難な状態だった。この日の決算で、Nookの数字は2013年度の4億8,040万ドルの赤字から2億1,760万ドルと「改善」を見せたものの、売上も35.2%下落して5億590万ドルとなったことを考えれば、これは改善ではない。
新製品の投入を控えたデバイスは44.8%減の2億6,000万ドル、コンテンツも20.6%減の2億4,600万ドルで、デバイスがコンテンツの足も引っ張っている。B&Nは今月、サムスンとタブレットでの提携を発表したが、Galaxy SにNookを搭載することで自社タブレット撤退の穴を埋めようとしている。大学ストアは17億5,000万ドルとほぼ落ち込みを止め、EBITDAで1億1,460万ドルの増益を確保した。これらで新会社を構成したとすれば、22億ドルの売上に対して1億300万ドルの赤字ということになるが、あまりに大学ストアへの依存が大きく、これでは同じこと(赤字部門の切り離し)に繰り返しになる可能性が強い。
オンラインの BN.comと実店舗を合わせた小売部門の実績は売上が5.9%減の42億9,000万ドル、EBITDAは6%減の3億5,410万ドルで、これもかなりの後退。店舗の新設は3ヵ所、閉鎖は17店舗で、最終的に661店舗となった。今年度は新設なしで20店舗の閉鎖を計画している。アマゾンや独立系書店が手堅く前年比以上を確保しているとみられる中で、6%の落ち込みはかなり深刻なものだ、多くの地域において大規模ストアという業態が採算的に成り立たなくなっている可能性が強い。1960年代以降、郊外中産階級を背景に発展してきたショッピングモールが、この階級が没落することで衰退していることと関係があるように思われる。これは米国に大きく遅れて大型化を進めてきた日本の書店業界の行く末を示している。
結局、実店舗もオンラインも明るい要素は皆無で、実店舗と大学の黒字(3.5億ドルと1.1億ドル)を食いつぶしていくしかない、という状況に変化はない。これでは分社化しても、ともに上場企業としての投資価値は低く、機関投資家はM&Aを狙うだろう。デジタル化の初期で鮮やかな手腕を見せた創業者のリッジオ氏にもあまりカードはない。◆(鎌田、06/26/2014)