アマゾンが定額制サービスの試験を行っていることが、アマゾン自身の「ちら見せ」によって明らかになった。月額9.99ドルで60万点のE-Bookとオーディオブックが読み放題、というKindle Unlimited (KU)の紹介画像/映像が7月16日、アマゾンのサイトに登場し、多くは間もなく消えた。情報を総合すると、これはプレミア会員向けのKOLLサービスを拡張したもののようだ。
KOLL(貸本)からKU(定額制)へ
アマゾンは予約を必要とするデバイス以外、新製品/サービスを大々的に宣伝するということをしない。多くのサービスは、その戦略性の軽重を問わず、日常的なスタイルで発表されるか、あるいは目立たない形でテストされ、静かに開始されることが多い。システムだけでなく、ビジネス・シミュレーションも徹底しており、立上げ時点で不確定要素はほとんどない。
定額制については、すでにプライム会員向けにKindle Owners Lending Library (KOLL )を提供しており、またKindle Freetime Unlimited (KFU)という子供向けのサービス(こちらはアプリ+ビデオ+E-Book)もある。プライム会員のKindleユーザーへの無償貸出は、実質的には定額制と同じことだ。したがって、KOLLを一般向けに9.99ドルで提供することにしたとすれば、すべては何年も前に計画されていたことと考えるのが自然だろう。実際に、出版社や著者との契約は、KOLL+KUとして処理されているようで、KUが新規というわけではない。では、ScribdやOysterにあえて「先行」させたのはなぜだろうか。おそらく、KUが先行すると大手出版社の定額モデルへの警戒心を高め、普及を遅らせると読んだのではないか。
60万というタイトル数は、ScribdとOysterよりは多いが、大差はなく、またGigaOm (By Laura Hazard Owen, 07/16)が発見したKUのテストページでは、ビッグ・ファイブのタイトルはない。サイモン&シュスターとハーパー・コリンズは、ScribdとOysterには出ている。逆にKUが含むオーディオブック(7,351点)は独自のもの。
アマゾンが独立したサービスとしたことで、 定額制はもはや特別のサービスではなくなるだろう。アマゾンは「先行」した2社を圧倒する力を見せようとするだろうし、NookやiBookstore、Google Playでも同様のサービスに着手する可能性は強い。著作権者に卸販売額を提供するモデルは、ScribdとOysterが始めたものではなく、アマゾンKOLLで実証済みのものだった。しかし、アマゾンがこれをプライム会員サービスに止めていた理由が、利益率などビジネスモデルのフィージビリティであった可能性もある。これが、著者/出版社、読者とプロバイダーの全当事者にプラスとなるかどうかは依然として不透明だ。しかし、これは後戻りできない。◆(鎌田、07/17/2014)
参考記事
- Amazon to Launch New eBook Subscription Service Called Kindle Unlimited, By Nate Hoffelder, The Digital Reader, 07/17/2014
- Amazon is testing “Kindle Unlimited,” an ebook subscription service for $9.99/month, By Laura Hazard Owen, GigaOm, 07/16/2014