どうやら日本でも「デジタル比率」が1割に達したようで、大規模な出版の構造変化が間近に迫っていることが感じられる。それはとても、紙かデジタルか、という些細なことに止まらない。コンテンツの価値/可能性の実現ということだ。
インプレスの2014年版レポートと米国の BookStats Vol.4 とほぼ同時期に出たので、久しぶりに数字を検討してみた。米国のほうは「E-Bookバブル崩壊」が騒がれた2013年の数字。バブルは消えるものだが、 超ベストセラーなしでも2012年の水準が達成されたことで、バブル説が誤りであることが証明されたと考えている。E-Bookを「バブル」というのは、 ここで止まってほしいという出版社の願望の表れで、現時点でこれ以上の市場拡大は出版社にとって危険なものと考えているわけだ。
何が危険かといえば、アマゾンへの依存である。もしこの会社に50%以上を依存するとすると、デジタルの利益に酔いしれていた出版社はアマゾンの苛斂誅求 を覚悟しなければならなくなる。2008-2012年のデジタル革命第1期の5年間の勝者、シェアのアマゾンと利益の出版社との激突は必然で、アシェット vs. アマゾンもこの前哨戦に過ぎない。
注意しなければいけないのは、様相が違ってきていること。かつては紙=書店の防衛だったが、大手出版社はどちらにも真剣ではない。すでに書店は、米国の出版物(紙+デジタル)の主要なチャネルとしての座をオンラインに譲っている。書店の衰退は止められないし、出版社は救おうとも考えていない。大手出版社は書店を気にしなくなった。紙は読者の フォーマット選好に合わせて最適化するだけだ。出版社の経営は、とくにメディア・ビジネスとしての利益率の維持・向上に向いている。利益率を維持するため に問題なのはアマゾンの流通シェアだけと言っていい。
そうした意味で、図書館に対する態度も変わってきた。大手5社の中で最も図書館のE-Book貸出しに冷淡であったサイモン&シュスターが、半年余りの実 験で態度を一変させた。図書館が本のマーケティングに役立っていたという事実を認め、商売のため貸出しを活用させることにしたものだ。この現金主義は感心 できるものではないが、悪いことではない。米国の図書館人は、大出版社が理解する唯一の言語で粘り強い説得努力を重ねた。ともあれ、図書館が出版界の共通 の課題である「見つけやすさ/見つかりやすさ」の最前線にいたことが実証され、あとは誰がどう、という問題になった。図書館は公共サービスで、アマゾンか ら独立した唯一の遍在的読書環境である。民業からのアクセスも活発になるだろう。日本では利権化されないことを願いたい。◆(鎌田、07/01/'14)