メディアドゥがScribdと提携

Scribd_logo2メディアドゥは7月3日、米国のドキュメント共有サービス大手の Scribd Inc.(スクリブド)との間で戦略提携を行い、昨年10月に開始した同社のE-Bookの定額制サービスに対し日本のコンテンツの提供を行っていくと発表した。まずは国内コンテンツの海外流通チャネルとして機能させていくとのことだが、出版社の対応によっては日本での定額制も実現する可能性が生まれた。

mediado_logo_newこの発表は東京国際ブックフェアに向けたもので、Scribd の事業開発担当ディレクターのラーマ・サダシヴァン氏が会場で説明を行っていた。本誌でもScribdや定額制サービスについては何度か取り上げているが、日本での実現に向けて一歩近づいたことになる。

デジタルによる、入手可能なコンテンツの爆発的拡大(発行点数の増加と絶版の減少)によって、出版界は新しい問題に直面している。いわゆる discoverability(見つかりやすさ/見つけやすさ)であるが、それはマーケティングや推奨機能だけでは解決できない。消費者の予算には限りがあり、選択肢が多いほど、判断は忌避される傾向にあるからだ。ストアで図書館のように試読(閲覧/立ち読み)の機会を増やすのは当たり前で、アマゾンでも早くから立ち読みを可能にしているし、購入取り消しもできる(実際にこれを使うユーザーは多くないが)。しかし、それでも十分ではない。

scribd-poster新しい市場環境とニーズに対応した販売/提供形態として考えられたのが定額制である。これは最大限の選択肢(読み放題)と最大限の安心(定額)を与えるサービスモデルで、ストリーミング・コンテンツに対しては有効であることが実証されたことから、米国では「本のNetflix」が待望されるようになった。書籍は音楽や動画とはかなり性格が違う上に、出版社も保守的なので、出版社(+著作権者)の納得できる契約モデルを設計するのは難しい。契約者の負担を毎月の平均支出金額に近づけ、サービス提供側が(読み放題で採算割れ)リスクを負わないと成立しないからだ。Scribdがどういうシミュレーションを行ったのかは明らかでないが、同社は9ドルの定額で、出版社には全体の10%以上を読んだものについて、販売と同額(卸金額)を支払うという大胆なモデルを提案し、量質ともに満足できるレベルを確保することに成功した。

契約者の増加は満足すべきもので、同社はこのサービスの世界展開に乗り出したわけである。コンテンツへのアクセスは販売モデルよりひと桁多く、それが出版社の売上機会につながる、と同社では強調している。現段階では、大手出版社の協力も拡大しており、版権収入の増加に寄与しているので、コンテンツは引き続き増加していくだろう。問題は、契約者の増加(収入の増加)と支払いのバランスがとれていくかどうかだ。仕入金額によるが、仮に月3点も読むような多読趣味のユーザーが多数を占めるようだと、事業は赤字となる。月1冊程度なら回っていくだろう。サダシヴァン氏も「スリリングだ」と言っていたが、かなり自信もあるようだ。

定額制は、分野(カテゴリ・フィクション、実用書等)や読者コミュニティ(子供、読書サークル)によって非常に大きな意味を持つものだ。マーケティングのベスト・プラクティスが開発されていくだろう。(鎌田、07/10/2014)

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