Wiredの幹部で著名なテクノ・ジャーナリストであるスティーブン・レヴィ氏が、同誌を勇退してTwitterの前CEO、エヴァン・ウィリアムズ氏が出資している新しいメディア Medium に総編集長として参加することを表明した(→ブログ)。E-Magとオープン出版プラットフォームの2つの性格を持ち、レヴィ氏の過去の著述のほか、寄稿者、外部ライター、専門家による記事を提供する。
Mediumの顔となるスティーブン・レヴィ
スティーブン・レヴィは、30年以上のベテラン・ジャーナリストで、アップルやGoogleなどに関する著作で知られる。Mediumはエヴァン・ウィリアムズ氏(写真下)が2012年8月に創業したブログ出版プラットフォームで、NYとSFCにオフィスを持ち、ロング・フォーム・ジャーナリズムをWebサイトから発信している。一見するとシンプルなインタフェースだが、記事の段落ごとにコメントをつけられるなどの工夫がしてある。名前は「媒体」ではなく、「中間」の意味に由来しているそうだが、何の中間を意図したものかは不明。構成は Bloggerのような著者別ではなく、かなり緩やかなテーマ別だが、将来的にはイシューやキーワードごとに構造化してダイナミックに並べ替えを行うものとなるかも知れない。
ビジネスモデルはこれから構築していくようだが、バナー広告はとらないようだ。ちなみに原稿料の算定基準はワードあたりではなく、読まれた時間で計算されるという。つまり記事の長さでもアクセスでもなく、時間を重視している(各記事には平均読了時間が明記されている)。これはメディアの性格を示している。昨年でも40人を超すスタッフと外部寄稿者、契約ライターを擁するメディアは、印刷物を持たなくてもコストは相当なものだが、eBayの創業者、ピエール・オミディヤ氏の"The Intercept"と同様、“資産家ジャーナリズム”は赤字を気にしてはいない。
Mediumの最大の問題/課題は、何を独自の価値として目指しているか、他のメディアとの違いは何か、というメッセージがクリアとは言えないことだった。ウィリアムズ氏のコンセプトは漠然としているので、強い個性を持った生身の編集者がこないと、どうにもならないのだと思う。スティーブン・レヴィ総編集長によって、メディアとしてのプラットフォーム性が、編集ポリシー的な面でも、機能的・技術的な面でも明確に出されることが期待される。◆(鎌田、07/03/2014)
参考記事
- Medium Hires Tech Writer Steven Levy as It Moves From Platform to Publisher, By David Carr, NY Times, 06/25/2014
- Tech journo Steven Levy on his move to Medium, By Lucia Moses, DigiDay, 07/01/2014