Publishers Weekly (08/25)は、女流エロチックロマンスE-Bookで知られる Ellora’s Cave出版社 (EC)のアマゾンを通じた売上が予期しない形で激減したことを伝えた。パティ・マークスCEOは、原因究明についてアマゾンの担当者との間で検討に入ったと述べている。原因はアマゾンサイトの検索アルゴリズムの変更によるもののようだが、同じことは多くの出版社で起こる可能性がある。
アルゴリズムの微調整で売上75%ダウン
下落はほぼ75%にも達し、ECはフリーの編集者との契約を打ち切るなどの規模縮小を迫られたようだ。ECはデジタル・ファースト(あるいはオンリー)では歴史があり(つまりKindle以前)、Kindleとともに成功を収めてきた小出版社で、本誌でも紹介したことがある。原因がアルゴリズムの変更によることはほぼ間違いない。ECの有力作家とそのタイトルの多くが、アマゾンの検索にかからなくなったのだ。売上が7割も減少すれば、すぐにも経営に影響が及びそうだが、マークスCEOは著者印税の支払に遅れは生じていないことを強調している。
E-Bookの単作のようなスタイルが、アマゾンのアルゴリズムの“微調整”で生じた急激な変動げ打撃を受けた原因だが、マークスCEOはPoDの点数を増やすなどの対応の必要を認めながらも、印刷本へのまとまった投資には否定的だ。デジタルに慣れた側からすると、印刷本の敷居は高いのだろう。ECのE-Book販売は2012年にブームを迎えたが、いずれは停滞するものと予想していたので、その後の縮小による損失は回避できたが、今回の衝撃はそんなスケールではなかったようだ。
自主出版のSmashwordsのマーク・コーカー氏はこの記事について、これは売上の大部分を一社に依存する多くの小出版社、著者出版者への警告と考えるべきだ、と述べている。システムのたんなる偶発的な調整でさえ、すべてを一変させることがあるからだ。印刷本の多くは1~3ヵ月で書店の店頭から消える。スペースに限りがあるからだ。E-Bookはいつまでもストアに留まるが、それを億単位の消費者のプロファイルやリクエストに対応して絞り込み、見せるのは(リアルの書店や取次の場合よりは複雑とはいえ)、しょせん人間がつくったアルゴリズムとコンピュータの演算に依存するしかない。アマゾンは完璧でもなく、特定の出版社や著者のために働いているわけでもない。
ちょうど28日付の朝日新聞に「アマゾン、出版社『格付け』 電子書籍、有利な契約優先」という記事が載っていたが、あたかも「有利な契約」を優先することが不公平であるかのような記事の書き方に違和感を感じた。アマゾンは公共図書館ですらない民間企業だ。「有利な契約」を優先するのは当然で、それが彼らの仕事なのである。「格付けが下の出版社の書籍は読者の目に触れにくくなり、出版社にとって死活問題」となるのは当然で、だからこそ自分で何とかすべきなのだ。アマゾン依存は怖い。それはアップル依存、Google依存、あるいは政府依存でも同じだ。ビジネスは厳しい。◆(鎌田、08/28/2014)