しばらく本誌ではデバイス関係の記事を取り上げてこなかった。ソニーはついに消費者向け製品から撤退したようだが、アマゾンをはじめ今年後半に新製品を準備している企業も少なくない。Good eReader (8/1)が動向をまとめているので紹介しておきたい。一般的に注目されるのは、Kindle Paperwhiteの第3世代(2014年版)ということになる。
アマゾンは今年もKindle Paperwhiteの第3世代機を発売する予定で、かなりの高性能化が期待できそう。300 PPIとフォントセットの拡張で、肉眼では印刷に近い解像度を実現するようだ。環境光センサで画面の輝度を自動調整する機能の搭載も噂されている。昨年同様にKindle Fireの新世代機を投入することも間違いないが、7型と8.9型の上位モデルには Fire phoneの先進機能である Fireflyを搭載する可能性が強い。なお、サムスンから買収した、フィリップス由来の Liquavista のエレクトロウェッティング技術応用製品は今年の登場はないが、最近カラーとグレイを独立表示させる新技術など5件の特許を申請した (The Digital Reader, 8/5)。来年にも電子インク系の画期的な新製品が登場する可能性もある。
B&Nは、サムスンと提携して Samsung Galaxy for Nook を発売する。ハード的にはサムスン・ベースなので、かなり強力なものとなった。これでビデオ、雑誌、新聞、絵本などの市場を開拓することになる。Good eReader によれば、E-InkのNook Glowlightの新モデルは見送られるもよう。本誌でお伝えしている通り、同社の状況は改善していないが、アマゾンが独占する英国での立上げに期待しているようだ。
Koboはまだ何の情報もなし。Good eReader は9月末の発表を予想している。しかし、タブレット市場は下降を始め、E-Ink製品にも更新の動機があまりないので、新製品を出さない可能性もかなりあると思われる。消費者向けでは 防水保証付のAquaやUltraを予定。オランダのDistriRead社のブランドであるICARUSは、2010年以来E-Reader製品を提供している。今年は6型のIllumina と9.7型のExcel を、Open Androidベースで提供する予定。
Good eReaderは、ほかに日本では知られていない Icarus と PocketBookを取り上げている。欧州のシェアが比較的多いのはPocketBookだろう。2007年以来、ロシアとウクライナを中心に東欧、中欧、北欧、西欧と堅実に拡大してきた(本社はスイスのルガーノ)。製造は台湾のFoxconnが担当している。製品のリリースは定期的で、今年はSony Digital Paperと似た大型スクリーンの業務用E-Readerを計画している。
欧州には、ほかにフランスのBookeenやドイツのTolinoのようなベンダーもあり、デザイン的に特色ある製品を出している。マーケティング的に無理をしないことが長続きしている理由だろう。◆(鎌田、08/07/2014)