ハーパーコリンズ社は8月11日、独立系書店のマーケティング努力を資金的に支援するプログラム HarperCollins Promotional Fund (HCPF)を発表した。現会計年度からスタートし、実績評価と支払いは四半期単位。期間中にHC社刊行書籍の販売増を達成した場合には翌年にも受給資格を得るという。実際に健闘し、シェアを高めている独立系書店を重視する姿勢が注目される。
健闘する独立系書店
米国の書店は一様に減少しているものではなく、数多くの店舗を有する大手が店舗とシェアを減らす一方なのに対して、地域密着型の独立系はむしろ健闘していることが知られている。ショールーム化の影響も、中小より大手に強く作用している。しかし、出版社の営業はB&Nなどの量販店を重視したもので、きめ細かい対応がとれていなかった。
HCのジョシュ・まーウェル販売担当社長は、HCPFについて「弊社で成長著しい独立系書店をチャネルとして高く評価し、著者と読者をつなぐ、信頼できるパートナーと考えています。インディーズは地域社会で大きな役割を果たしながらも、しばしば過小評価されてきたことを弊社は認識しており、本についての話題をつくり出す上での大きな努力を支援させていただきたいと考えております」とコメントしている。
今回のHCのプログラムは、従来からあった販売協力金(co-op=コアップ)のシステムを簡素化するとともに、HCの著者のための販売促進における創意工夫を支援するのが目的、とされている。書店営業担当を通じて行っていた従来の運用では、効率が重視されるため、どうしても書店の規模に応じたものとなり、地域特性や著者の意向などを反映したものではなかった。システムを簡素化することで、書店側の自発性・創造性を期待している。金額については、おそらくアマゾンのアフィリエイト料がひとつの基準になるだろう。アマゾンが今後書店へのアプローチを強化するのは間違いなく、量販店重視の出版営業では対抗できなくないことは明らかだ(アマゾンにとっては同社のサービスを一つでも使ってもらえればいいのだ)。
システムとして大きく展開し、規模と効率性を利益に変える大手書店(書籍販売企業)にとってデジタルは「味方にできなければ敵になる」のに対して、稼業/家業で地域を相手にする独立系書店は環境変化には強い。大手書店の抜けた穴をアマゾンとは別の方法で埋められるからだ。足りないのは資金とシステムで、これを提供するものが書店のパートナーとなる。大手出版社の独立系支援は、遅すぎたとは言えないにしても、かなりの機会を失っていることは確かだろう。◆(鎌田、08/14/2014)