Kindle Voyageとデジタル読書体験の新段階

kindles-2-1アマゾンは9月17日、Kindleシリーズ・リーダの第7世代製品を世界に向けて発表した。いつものように噂がリークに混じって頻度が高まった段階で発表されるパターンを踏襲したが、たんなる画面の高性能化を超える操作性の改善に内容がある。ベゾスCEOは「デバイスを忘れ、読むことに没入できる」というデザイン・ポリシーは新段階に入ったと宣言した。

触感インタフェース:PagePress

ハイエンドの Voyage(ヴォヤージュ、ヴォイジ)は、199ドル(日本価格21,480円)と一段高く設定されているが、前面フラッシュガラス、背面マグネシウム製で7.6mm厚、181gの軽量を実現している。新世代のPaperwhite 6.8型ディスプレイは、300dpiと初期のレーザープリンタ並みの解像度を実現した。前面を覆う強化ガラスは、光を拡散するマイクロエッチング加工を施して反射を防いでいる。暗い場所で読むためのフロントライトは輝度を39%増し、環境への自動調整をより細かく行うが、嗜好や環境順化時間に個人差があることを配慮し、調整は時間をかけて行う。

Kindle VoyageVoyageの新機能と言えるのが、ページ送りのためのPagePress機能。パネルではなく、ベゼルに置いた親指をそのまま軽く押すだけで、センサが感知してページを切替える。ページの切替確認は、微妙な振動による触覚フィードバックでユーザーに伝えられる。指圧のレベルとフィードバックの強度もまた調整できるようになっている。紙の本を模したフリック/スワイプのページ遷移は、いかにも自然なようでいて相手が機械なので、E-BookのUIとしては必ずしも快適なものではなかった。片手操作が難しいためだと思われる。いまだに第3世代機のKindleを使うユーザーが少なくないのは、ボタンが使えるためだ。

ローエンドは79ドルのKindleで、従来製品のマイナーチェンジにより、若干の軽量・高速化、ストア領域の倍増、タッチ・インタフェースを導入した。いつかは無償配布となるのではないかと思われたベーシック・モデルは79ドルという価格を維持した。従来型のPaperwhiteは119ドル、とこれも常識的な線。NookはGloの新製品を見送り、KoboはハイエンドのAura H2Oというニッチ製品に向かった。アマゾンのハイエンドは防水のような特殊用途ではなく、ページ送りというブック・リーダの原点に関するものだったことが評価できる。PagePressは、ユーザーによるフィードバックと地道な実験の繰り返しによる成果だ。

考えている人は少ないが、デジタルな本と読書体験の追求には終わりがない。これまでは、印刷の冊子本を最高のものと考えて、それをデジタルに再現することに重点が置かれていた。検索機能やポップアップ表示などのコンピュータ的機能は操作性の上では十分に吸収できていない。個人的にはページと同様に「スクロール表示」を入れて欲しい。これは必ずしもデジタルではなく、古典籍を中心とした巻本を表示するには必須なものだ。冊子本がデフォルトである時代はもう終わるべきだと思う。デジタル巻物が、ページに区切られない失われた表現形式を復活させることに期待するからだ。(鎌田、09/17/2014)

Scroll Up