米国出版社協会(AAP)は9月19日、5月の月次統計を1-5月通算とともに発表し、ほぼ今年前半の傾向を示すと思われる数字を示した。会員1200社の5ヵ月通算売上は26.5億ドルで、昨年の25.5億ドルを3.9%ほど上回った。E-Bookは前年比7.0%増で、6.3%増のペーパーバックともに成長を牽引したが、これは青少年・児童書がほぼ3割増となったこととも関係している。
デジタルの成長は続く
米国でE-Book市場が飽和した(あるいは近い)という都市伝説は聞かれなくなり、それにつれて出版社の「アマゾン問題」が深刻さを増しているようだが、E-Bookは安定成長を続けている。在来出版社の一般商業出版物をカバーするAAPのデータでは、全体で26.5億ドル。E-Bookが6.7億、ハードカバーが8.7億ドル、ペーパーバックが7.9億ドルで、デジタル比率は25%だ。AAPの数字に関する限り、これが急に動くことは考えにくいが、この団体の数字が全体の出版市場を反映するものではないことは再三述べた通り。
今回の発表では、(1)成年向け、(2)青少年・児童書、(3)宗教書と3分類した中で、(2)が13年同期比で急伸している。この市場は全体の26%あまりを占めるが、とくにYA向けがベストセラーの影響を受けやすく、2012年は『ハンガー・ゲームズ』がメガヒットとなって急拡大。昨年はそれに匹敵するものがなくて反動減した。今年は映画化された'The Fault in Our Stars'、'Divergent'の恩恵を受けているが、全体としてはより地に足が付いた市場として台頭している。E-Readerの普及も進んでおり、青少年・児童向けE-Book市場が出版社、ストアに重視されているのは当然だ。
TVドラマ、映画とその原作本の売行きが同期する傾向にあるのは当然だが、映像化されてから売れるのはデジタルが先なのは、入手しやすいからだろう。DBWのベストセラー・リストでは半数がそうした映像化作品で占められている。アマゾンがKindle Fireでアプローチしているのも、マーケティングにおける連動性で、それによってメディア商品の売上を最大化するものだ。E-Bookはかつての角川書店の「読んでから見るか…」の現代版を可能とする。◆(鎌田、09/25/2014)
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Jan-May 2014
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Jan-May 2013
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Percent Change
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TOTAL TRADE*
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$2652.3
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$2553.6
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+3.9%
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Adult Fiction/Non-Fiction
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$1726.2
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$1789.9
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-3.6%
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Children’s/Young Adult
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$695.9
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$533.2
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+30.5%
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Religious Presses
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$230.2
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$230.5
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-0.1%
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Jan-May 2014
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Jan-May 2013
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Percent Change
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Total Trade eBooks
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$669.7
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$626.0
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+7.0%
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Total Trade Hardback
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$867.1
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$868.5
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-0.2%
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Total Trade Paperback
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$793.4
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$746.6
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+6.3%
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